京大ら,世界最小粒径のダイヤモンドで温度計測

京都大学とダイセルは,独自に開発したシリコン-空孔(SiV)中心を含む爆轟(ばくごう)ナノダイヤモンド(SiV-DND)を用いて温度計測の実証に成功した(ニュースリリース)。

細胞内などの微小な領域を計測できる温度センサとして,ナノダイヤモンド中の発光中心が注目されている。特に,発光中心の中でも窒素-空孔(NV)中心が高い温度感度を実証されているが,高感度温度計測には可視光とマイクロ波の両方を照射する必要があった。

一方,SiV中心は鋭い発光スペクトルを示し,ピーク波長などの温度依存性を利用することで,光のみで温度変化を感度よく検出できる。しかし,これまでSiV中心を用いた温度計測での最小粒径は200nmだった。細胞小器官や細胞核内に導入するには粒径30nm以下であることが望ましい。

そこで研究グループは,ダイセルが開発したSiV-DNDに処理をし,平均粒径がおよそ20nmとなったSiV-DNDを用いた。

温度制御可能な共焦点レーザー顕微鏡で,カバーガラス上のSiV-DNDの発光画像を観察した。ガラス全面にSiV-DNDを分布し,強い発光を示す輝点でSiV-DNDの発光スペクトルと温度依存性の測定を行なったところ,この輝点はいくつかのSiV-DNDが集まった凝集体と考えられた。

温度22.0℃で測定すると,波長約737nmでピークを持つSiV中心由来の発光が観測されたが,温度を40.5℃にするとピーク波長は長波長側に移動した。これは熱によって,ナノダイヤモンドを構成する炭素原子間の結合距離が僅かに変化することや,炭素原子間の振動の仕方が変化することなどが影響している。

ピーク波長の温度依存性を調べた結果,生きた細胞などの生体試料に適した温度(37℃前後)付近で,ピーク波長が温度に対して線型に変化した。また今回,26個の輝点で温度に対するピーク波長の変化率を調べた結果,平均値は0.011nm/Kとなった。

これは既報のバルクダイヤモンド中のアンサンブルSiV中心で得られた結果(0.0124nm/K)と近い値であり,このナノダイヤモンドが温度センサとして利用できることを意味する。

得られた変化率を利用して,輝点部での温度感度測定を行なった。温度感度とは測定時間1秒あたりに検出できる温度の正確性を表す指標。今回調べた輝点では最高で1.1K/(Hz)-1/2,平均で2.9 K/(Hz)-1/2となった。これは10秒の積算時間で1K以下の温度精度が得られることを意味し,生体試料の温度測定に十分適用可能。

また,20nm程度のナノダイヤモンドの粒径は,これまで温度計測が報告されているNV中心などの他の発光中心を含め,ナノダイヤモンドの中で世界最小径だという。研究グループは今後,生命科学分野等での応用が期待されるとしている。

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