環境研,日射量増のプランクトン光合成の影響解明

国立環境研究所は,近年,春に観測されている日射量の長期的な増加がどのくらい植物プランクトンの光合成速度に影響を与えているかを,霞ヶ浦長期観測データを使って解析した(ニュースリリース)。

近年,全世界的な傾向として,エアロゾルの減少等の影響で日射量が増加してきていることが知られている。我が国においても,1992年から2019年の間で解析したところ,5月に日射量が増加しており,この日射量の増加によって,湖沼の水温も上昇してきていることが報告されている。

霞ヶ浦でも,日射量の増加に伴い,特に春の水温が上昇している。霞ヶ浦では,春季に植物プランクトン量が多いこともこれまでの長期データから確認されており,日射量が大きくなるにつれて,植物プランクトンによる光合成の速度も影響を受けている可能性がある。

これまで日射量の増加による植物プランクトンの光合成速度への影響はさほど多く研究されてこなかった。植物プランクトンの増加は,それを餌にする動物プランクトンや魚類にも影響を与えることが考えられ,春季における植物プランクトンの光合成速度が変わることが湖の生態系に影響を与えている可能性がある。

そこで本研究では,1992年から2019年まで観測された春の日射量の増加がどのくらい植物プランクトンによる光合成の速度に影響を与えているかを,栄養塩や,水中の濁りなど,水質の影響も踏まえた上で明らかにすることを目的とした。

研究ではまず,安定同位体を用いた13C法という手法を使い,植物プランクトンによる光合成の速度(一次生産速度)を測定した。この測定は1992年から2019年まで毎月行なわれ,研究では合計1,328回の測定結果をもとに,光合成速度(光—光合成曲線)のモデル化を行なった。

それをもとに,実際に観測された日射量の上昇率と水温の上昇率から,28年間における日射量の増加による植物プランクトンの光合成速度の変化を,栄養塩や水中の濁りなど,水質の影響と比較し解析した。

光—光合成曲線を元にしたモデルの解析の結果,植物プランクトンの光合成速度は1992年から2019年にかけて増加した日射量により,0.093gCm-2h-1から0.105gCm-2h-1と約13%の増加が見込まれた。水質の悪化による光合成速度は,0.026gCm-2h-1から0.179gCm-2h-1と大きく変動すると試算され,その場における窒素栄養塩濃度の増加に伴う植物プランクトンの窒素割合の影響をより強く受けていることも明らかになった。

研究グループは,今後も日射量の増加が続くとしたら,その影響はこれまでより強く出てくる可能性があるとしている。

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