量研ら,マイクロ波加熱でリチウムを省エネ溶解

量子科学技術研究開発機構(量研)とマイクロ波化学(MWCC)は,リチウム鉱山で採鉱し選別された実際のリチウム鉱石であるスポジュミン精鉱に省エネ精製技術を適用し,マイクロ波加熱温度300℃で溶解することに成功した(ニュースリリース)。

レアメタルの一つであるリチウムの溶解では,スポジュミン精鉱を1,000℃以上のか焼処理の後,濃硫酸による250℃以上の焙焼処理が必要となる。今回,量研が開発した化学処理とマイクロ波加熱を組み合わせたアルカリ・マイクロ波溶融技術を実際のリチウム鉱石に用いて実証試験した。

具体的には,プラント設計に用いる工学データの取得のため,これまでに適用できていたグラム規模を扱うラボ装置から,100グラム規模を取り扱うMWCCのマイクロ波ベンチ装置に約100倍スケールアップし,効率よくマイクロ波が照射できるようにさらに工夫して溶解実証試験を行なった。

その結果,塩基試薬による常圧下での300℃のマイクロ波加熱処理と常圧・室温下での酸溶解により,全溶解させることに成功し,従来技術で必要だった1,000℃以上での反応を,この技術により300℃という非常に低い温度で進めることができたという。これはリチウム以外のレアメタル鉱物の溶解にも反映できる成果だとする。

設備投資(CAPEX),運用コスト(OPEX)及びCO2排出量を従来技術と新たな低温精製技術で相対比較した結果,CAPEXとOPEXは70%程度,CO2排出量は90%以上削減できる見通しを得たという。

この結果から,今まで精製コストが高かった鉱山からのリチウム精製コストの低減に貢献できることから,リチウム精製に係る対環境負荷の低減のみならず,リチウム価格の低下にも期待できる。

溶融条件のさらなる最適化により,いっそうの省エネ・CO2削減が期待できるため,この研究を通じて,事業規模のプラント設計に資する工学データを蓄積し,早期の社会実装を目指す。

現在,鉱物資源の供給を巡っては激しい流動期を迎えている。鉱物資源産出量の減少のみならず,エネルギー源の供給不足による製造事業における生産量の縮小の影響も受けており,鉱物資源の安定的確保は喫緊の課題となる。

この技術は,①マイクロ波による加熱の高効率化,②化石由来エネルギー源から電化エネルギー源への転換,③化学処理による低温化により,経済の持続的発展に不可欠な鉱物資源を,環境親和性を有しつつ安定的に確保することに貢献できるとしている。

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