新潟大学と産業技術総合研究所は,高効率水電解セルと太陽電池を用いた太陽光水分解によるグリーン水素製造システムを開発し,世界最高水準のSTH=13.9%で1か月間安定に水素を製造できることを実証した(ニュースリリース)。
太陽電池と⽔電解セルを組み合わせた太陽光⽔電解⽔素製造システムにおける,太陽光-⽔素変換効率(STH)は式①によって算出される。⾼いSTHを達成するには,太陽電池の効率(STE)と⽔電解セルの効率(ETH)の向上に加えて,両者の最⼤出⼒⽐(MF)の最適化が重要となる。
① STH(%)=STE×ETHxMFx100
STE(solar-to-electricity efficiency):太陽電池の太陽光-電気変換効率
ETH(electricity-to-hydrogen efficiency):⽔電解セルの電気-⽔素変換効率
MF(matching factor):太陽電池と⽔電解セルの最⼤出⼒の⽐
研究グループでは,鉄,ニッケルおよびタングステンを含む混合⾦属酸化物(FeNiWOx)が⾼活性かつ安定な酸素発⽣触媒として働くことを⾒出した。FeNiWOx電極を酸素発⽣アノードとして,⽩⾦⽔素発⽣カソードと組み合わせたセルを作成して⽔電解を⾏なったところ,従来の⽔電解セル(315mV程度)よりも低い過電圧(240mV)で⽔電解を達成することに成功した。
⼀⽅,ガリウムヒ素(GaAs)太陽電池は,安定で⾼いSTEを⽰すことが知られているが,その起電⼒が⽔分解には不充分であり課題があった。しかし,この⽔電解セルは低過電圧で作動するため,2接合型GaAs太陽電池の起電⼒でも⽔を分解できることがわかった。
2接合型GaAs太陽電池と⽔電解セルを⽤いて疑似太陽光(1sun)照射下で太陽光⽔分解を⾏なったところ,世界最⾼⽔準のSTH(13.9%,最新のSTHは6.1〜16%)で1か⽉間に渡り,安定に⽔から⽔素を製造できることを実証した。
この⾼いSTHは,⽔電解セルの⾼い電解効率(ETH=85%)と⽔電解セルと太陽電池の最適マッチング(MF=99%)によって達成されることを明らかにした。研究グループは,太陽光⽔分解によるグリーン⽔素製造システムの早急な社会実装が期待されるとしている。