東大,ラマン分光ウェアラブル化学センサーを開発

東京大学の研究グループは,容易かつ安価に作製できる金ナノメッシュを用いた,複数の化学物質の多重高感度計測が可能な表面増強ラマン分光法(SERS)による高感度・多目的なウェアラブル化学センサーを開発した(ニュースリリース)。

柔軟で伸縮性があり,肌に張り付けることが可能なウェアラブルセンサーは,主に物理的計測でバイタルサインを計測するが,最近では着用者の生体流体(汗,唾液,涙,尿など)を非侵襲的にその場で化学センシングするよう改良されてきている。

しかし,従来のウェアラブルセンサー(主に電子センサー)は,一度に分析対象物の1種類の化学物質にしか反応せず,異なる化学物質を同時に識別することはできない。

一方,表面増強ラマン分光法(SERS)は,複雑な分析対象物の高感度・多重化学センシングを,分析対象物の予備知識を必要とせずに非侵襲的・ラベルフリーで実現できることから,次世代ウェアラブルセンサーへの応用が期待されている。

最近,複数のグループがウェアラブルSERSセンサーを開発したが,それらのセンサーは優れた分子特異性と高い検出感度を示す一方,製造プロセスが複雑で,多機能センシング能力も限られており,大規模なセンサー(例えば10cm×10cm以上のセンサー)を低コストで作製し,多様な用途に応用することは困難だった。

研究では,作製が容易,低コストで,柔軟性,伸縮性,接着性,生体適合性のある極薄の金ナノメッシュに基づく,拡張性の高いウェアラブルSERSセンサーの開発に成功した。このセンサーは,最近報告された,人間の皮膚や平らでない非剛体表面に長時間付着可能な,金をコーティングした生体適合性ポリビニルアルコール(PVA)ナノファイバー製の,炎症を起こさない,ガス透過性,軽量,伸縮性の電子センサーから着想を得た。

研究では,その未発見の光学特性を利用し,SERS機能を得るために構造の最適化を行なった。同時に,製造の容易さ,コスト効率及びセンサーの薄さ,高い柔軟性,高い伸縮性,高い接着性,高い生体適合性などの優れた特長を保持した。

このセンサーは,家庭用ハサミで任意の形状に加工し,事実上あらゆる表面に装着できるという。低濃度から高濃度(10-106nM)までの多様な分析対象物のラベルフリー大規模その場センシング,すなわち「多目的ウェアラブル分析化学」ができるとする。

このセンサで分析を行なったところ,市販の金属SERS基板の感度に匹敵するか,それ以上の感度を得ており,研究グループは,低濃度での生体分子のラマン分光法への応用には十分だとしている。

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