公大ら,キラルなサブTHz帯高周波材料を発見

大阪公立大学と放送大学は,キラル磁性結晶のキラル磁気ソリトン格子(Chiral soliton lattice:CSL)と呼ばれる磁気超構造のマイクロ波領域における集団共鳴運動を実験的に観測することに成功した。また,理論上は,その共鳴周波数が小さな磁場でもサブテラヘルツ帯まで広帯域に変調することも判明した(ニュースリリース)。

Beyond 5Gにおいて,無線通信をさらに大容量化・高速化するには周波数帯域を大幅に拡張することが求められている。

マイクロ波を共鳴吸収する磁性体は,高周波計測装置や電波望遠鏡などに用いられるバンドパスフィルターに使用されており,高周波技術開発に必要不可欠だが,既存の磁性材料の周波数は数GHzから70GHz程度に留まっており,次世代通信技術の開発には全く新しい物理現象の活用が求められていた。

そこで研究グループは,周期変調が可能な長周期磁気構造に注目した。CSLは,スピンがらせん状にねじれた部位(ソリトン)が周期的に整列した磁気構造で,キラルな磁性結晶において自然に形成される。

CSLは,印加する磁場強度を変えることでソリトン同士の間隔,つまり,らせん周期を連続的に変調でき,高いコヒーレンス性と構造制御性を併せ持つ。CSLは磁気超構造の並進対称性の破れに応じて,磁気超構造の格子振動に該当するCSLフォノンと呼ばれる集団運動が起こることが予想されていたが,CSLフォノンが現実の物質で実現されるとは考えられていなかった。

今回,研究グループは,マイクロ波分光法を用いてCSLを発現する典型物質として知られるCrNb3S6磁気結晶が示す高周波特性を精査し,磁気共鳴の高次モードが16GHzから40GHzという幅広い周波数帯で現れることを観測し,実験データから,高次モードがCSLフォノンであることも実証した。

CSLフォノンは従来の強磁性共鳴よりも高周波かつ広帯域な範囲で現れる。理論解析によると,3つ目の高次モードは100GHzを超えて成長すると見積もられた。また,実験データからキラル磁性結晶CrNb3S6の反対称性相互作用とハイゼンベルグ型の対称性交換相互作用の大きさを見積もることができる。元素置換したCrTa3S6結晶ではその物質パラメーターからCSLフォノンの周波数がさらに高くなり,約450GHzに到達すると予測された。

この成果は,サブテラヘルツ帯域まで磁気共鳴の周波数を変調するための新たな指導原理となるもの。研究グループは今後,より高周波で観測できるよう研究を進める。また,物質探索を進めていくことで,室温動作や減衰特性の向上も期待できるとしている。

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