コニカミノルタは,超高感度組織染色サービスにおける高輝度小粒径PIDの開発で,同社社員が,近畿化学協会が主催する,2021年度「化学技術賞」を受賞したと発表した(ニュースリリース)。
今回,受賞をしたのは,同社の一杉俊平氏,田畑顕一氏,多喜川真人氏,池田祐子氏,服部達哉氏の5名。
同社では,医療・ライフサイエンス分野で注目されている生体分子の標識材料として,従来の蛍光色素より輝度と褪色性に優れた「高輝度蛍光ナノ粒子PID(Phosphor Integrated Dots)」を開発し,従来技術では困難であった標的タンパクの高感度検出を実現した超高感度組織染色サービス「Quanticell」を提供している。
次世代PIDでは,特異性向上のために小粒径化を図りながら,発光する明るさ(輝度)は保たれることが必要で,これに対して,新たな濃度消光抑制色素の開発(色素開発)と粒径・内包量制御粒子合成法の開発(粒子合成法開発)によって,従来の1/4の体積にもかかわらず同輝度を有する高輝度小粒径PIDの開発に成功した。
この開発では,データ駆動による開発法の革新により,従来型の開発では到達し得ない高特性を短期間で実現しているという。今回の開発を従来型で行なった場合,始めに色素開発を行ない,新色素が開発された後に粒子合成法開発を行なうという手順が必要だった。
データ駆動による開発では色素開発と粒子合成法開発が並行して進められるため,短期間に,しかも色素を粒子に仕上げた最終形でのベストマッチが選択できるという利点があった。
また,色素開発においては,機械学習を用いることで対照実験を不要とした帰納的な分析から,課題解決のための複数の制御因子を突き止めた。さらに,粒子合成法開発においては数多く存在するパラメータから重要な制御因子を抽出し可視化することで,これまで半ば「経験と勘」に依存していた粒子合成処方最適化を非属人的なプロセスへと進化させ,人間の感覚では見逃されていた重要な因子を見出すことにも成功した。
同社では,シミュレーション技術,センシング技術,AI技術(機械学習,ディープラーニングなど)や,これらを組み合わせた画像IoT技術を利用して,マテリアルズ・インフォマティクス(MI)およびプロセス・インフォマティクス(PI)を進めている。今回の成果は,基幹部材をデータ駆動型開発によって合理的かつ迅速に開発可能であることを示した実例だとしている。