産総研,静電気分布を発光させる物質を発見

産業技術総合研究所(産総研)は,電荷に反応して発光するセラミックス微粒子を発見し,目に見えない静電気を目視やカメラで可視化する静電気発光センシング技術を開発した(ニュースリリース)。

静電気は低電圧駆動の電子デバイスの誤作動を誘発するため,静電気がいつ,どこで発生するのかを把握するセンシング技術が必要とされている。従来の静電気センサーは,表面に凹凸のある対象物は正確には測定できず,移動している状態や,測定環境が変化する状態での測定にも対応できなかった。

研究では,静電気で発光する物質を探索するため,電荷の移動による発光が知られている既知物質を系統的に調べ,SrAl2O4:Eu2+が空気中のイオンや帯電粒子などの微弱な電気に反応して発光する静電気発光材料として利用できることを見いだした。

SrAl2O4:Eu2+をアクリル樹脂に添加したフィルムに,静電気発生ガンからコロナ放電を照射すると緑の発光が観測された。発光したフィルムの表面電位分布を測定したところ,静電気発光では電荷が注入された部分に発光が生じることが分かった。

次に摩擦と剥離によって,約20〜30kVの静電気を発生する静電気を発生させるヴァンデグラフ型静電気発生器に指を近づける実験を行なったところ,静電気発光材料は,材料が帯電するときと放電するときの両方で発光現象が起きることが分かった。

静電気発光のメカニズムとしては,①紫外線から(可視光の)青色までの波長領域の光を吸収してキャリアが伝導帯に励起され,②一部のキャリアは欠陥準位に捕捉される。外部から電荷が発光材料に注入されると,③欠陥準位に捕捉されたキャリアが伝導帯を伝って移動し,④Eu2+に由来する発光が観測されたと考えられるという。

また同じ化学組成で結晶構造が異なるSrAl2O4:Eu2+において静電気発光する材料としない材料があることも分かり,材料設計によって発光強度を調節できる可能性が示された。

発見した静電気発光を示すセラミックス微粒子は粒径が数µmであり,電源を必要とせずに静電気に由来する電荷を検知して光を出力することができ,世界最小の静電気センサーでもあるとする。対象物に塗布することでセンサー機能を持たせられるので,移動する3次元的な対象物の静電気をカメラでリアルタイムに遠隔で測定できる可能性がある。

研究グループは今後,静電気発光のメカニズムの解明を行うとともに,さまざまな環境に柔軟に対応する静電気の可視化センシング技術の技術的基盤を確立し,静電気発生のモニタリングおよび静電気対策の実証試験を行なうとしている。

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