沖電気工業株(OKI),中国電力,電力中央研究所は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務において,次世代火力発電プラントや化学プラントなどの超高温設備向けの,光ファイバーセンサーを用いた空間分解能10cmでの温度計測技術を開発した(ニュースリリース)。
わが国で技術開発が進められている次世代火力発電プラントは,再生可能エネルギーの出力変動を調整する役割が期待されている。
しかし,起動停止時や負荷変動時に生じやすい異常過熱により,伝熱管クリープ破断やエネルギーロスを引き起こす課題がある。また、化学プラントのような高温反応装置では,不均一な化学反応に起因するホットスポットの発現による安全性や効率,耐久性の低下が課題となっている。
しかしながら既存の高温用センサーは,計測精度,空間分解能,耐久性を両立できず,超高温で稼動する産業設備の温度分布から異常過熱箇所をリアルタイムで把握することは困難だった。
研究では,750℃以上の高温下での安定的な計測を実現する光ファイバーコーティング技術と,この光ファイバーを使ったセンサー技術,10cmの分解能でリアルタイムでの温度分布計測を実現する光ファイバーセンサー用信号処理技術を開発した。
さらに,ボイラー伝熱管への敷設方法を開発し,伝熱管の模擬環境としてプロパンバーナー燃焼ガス中に保持したSUS管の表面温度計測に適用することで,750℃での長時間使用と,最高950℃までの計測,さらに750~900℃の超高温において一般的な熱電対と同等の精度での温度計測が可能であることを実証した。
研究においてOKIは,光ファイバーの温度変化やひずみを,光ファイバーを伝搬する光信号の反射光に生じる周波数変化から精度良く抽出する自己遅延ホモダイン信号処理方式(検出すべき光信号を二分岐した後,一方を時間的に少し遅らせて再び合波することにより,同じ信号の時間的に異なる部分同士を干渉させる方式)を新規に開発。長さ500mの光ファイバーの任意の場所に生じた温度とひずみの変化を10cmの位置精度で瞬時に計測する技術を実現した。
研究グループは今後,NEDO委託業務にて開発した要素技術を組み合わせ,超高温下で動作する設備・機器をデジタルで完全に再現するデジタルツインの実現を目指す。稼動しているシステムにおけるホットスポットの発現状況,溶接部分の応力分布といった重要な情報に,仮想空間上で容易にアクセスすることで,装置の余寿命を予測や,装置の動作を制御が容易になるため,装置の省エネ化や長寿命化,余寿命の予測精度向上が期待できるとしている。