市大ら,卵巣がんを可視化する蛍光色素を開発

大阪市立大学,米ハーバード大学,米ジョージア州立大学は,近赤外線レーザーを照射することで卵巣がん細胞を手術中に可視化する新しい蛍光色素を開発した(ニュースリリース)。

卵巣がん患者において予後を改善する最も重要な要素は,手術による病巣の完全切除だが,卵巣がんは治療開始時点で腹腔内に小さい腫瘍が散らばる播種という状態が多く,このような1mm以下の微小な病巣まできれいに切除することが大切となる。

そこで,手術中にがんの場所を蛍光で標識する蛍光ガイド手術が注目を集めているが,現在認可されている数少ない蛍光色素は腫瘍集積性に乏しい上,薬物動態に改良の余地があり,さらに毒性により実臨床での効果や実用性に大きな限界がある。

今回研究グループは,近赤外領域に蛍光を持つスクアライン色素の化学構造や電荷に修飾を加えることで,高輝度で安定した卵巣がん指向性のある蛍光色素を開発した。

合成,検討したスクアライン派生蛍光色素の中で,フッ素を持つOCTL14は血清タンパクとの結合能が低いため標的組織に迅速に分布し,細胞膜上の有機カチオントランスポーターを介し卵巣がん細胞内へ迅速に取り込まれ,リソソームに集積することでがん細胞内に保持されることが判明した。

また,OCTL14を卵巣がん腹膜播種マウスモデルに投与したところ,投与24時間後まで1mm以下の微小な腫瘍組織を検出し,その蛍光ガイド下での手術では肉眼だけに比べて多数の腫瘍の除去が可能だった。がん細胞に取り込まれなかったOCTL14は素早く胆汁や尿を介して体外に排泄され,そのことによりがん細胞と周辺組織とのコントラストが付きやすく,また毒性が低いこともわかった。

さらに,異なる波長の蛍光を発する色素とOCTL14を併用することで,尿管など機能的に重要な正常組織とがん組織を同時に検出することが可能であることも明らかにし,婦人科手術の際の合併症の一つである尿管損傷のリスクを減少しつつ,腫瘍の完全切除と正確な手術に貢献できることも証明した。OCTL14は小さな分子で,比較的簡単,安価に大量合成が可能で,臨床応用にも適しており,普及が期待されるという。

近年手術は腹腔鏡などによる非侵襲的な方法が主流になってきている上,ダビンチ・システムなどロボット手術が増えると,手術のナビゲーション技術の重要性は増すと期待されている。しかし現在のところ医薬品として認可されている蛍光物質はICG含め数個と限られており,選択肢が少ないことがこの技術の限界となっていた。

研究グループは,この蛍光物質が手術に応用されることで,卵巣がん患者の予後が改善が期待されるとしている。

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