岡山大,理論的に可能な光合成炭酸固定経路を発見

岡山大学の研究グループは,理論的に可能な新しい型の光合成炭酸固定経路をコンピュータ計算により発見した(ニュースリリース)。

光合成炭酸固定経路であるカルビン・ベンソン回路のうち,教科書に載っている標準型のカルビン・ベンソン回路では,13種類の酵素反応により,二酸化炭素から有機物を生成する炭酸固定が行なわれる。

光合成炭酸固定が標準型のカルビン・ベンソン回路のみで行なわれているとするとこれらの13種類の酵素反応のどれが欠けても炭酸固定が止まり植物は生育できなくなるはずだが,標準型のカルビン・ベンソン回路の1酵素反応を行なっているFBPaseという酵素を欠くシロイヌナズナが速度は小さいながらも生育することが観察されていて,この観察結果は標準型のカルビン・ベンソン回路では簡単に説明できなかった。

また,理論的に可能であることが知られている,標準型のカルビン・ベンソン回路の一部の反応をトランスアルドラーゼという酵素による酵素反応に代替させた経路(以下,「既報のトランスアルドラーゼ型経路」)もFBPaseが行なう酵素反応を必要としていて,既報のトランスアルドラーゼ型経路によってもFBPaseを欠くシロイヌナズナの生育を簡単には説明できなかった。

標準型のカルビン・ベンソン回路に含まれる13種類の酵素反応とそれらの逆反応,および,既報のトランスアルドラーゼ型経路に含まれるトランスアルドラーゼが行なう反応とその逆反応により二酸化炭素を原料としてグリセルアルデヒド3-リン酸(炭素を3個含む有機物)が生成する経路を,既存のプログラムExPAを用いるコンピュータ計算ですべて求めたところ,標準型のカルビン・ベンソン回路と既報のトランスアルドラーゼ型経路の他に,新しい型の経路が算出された。

新しい型の経路は,既報のトランスアルドラーゼ型経路に含まれているトランスアルドラーゼが行なう反応の逆反応を含んでいたが,FBPaseが行なう反応は含まず,FBPaseを欠くシロイヌナズナの生育をよく説明した。

また,新しい型の経路は,SBPaseという酵素が行なう酵素反応を含んでいた。SBPaseの働きを増減させると二酸化炭素からの有機物の産生が増減することが知られていて,SBPaseが行なう酵素反応を含む新しい型の経路はそのこともよく説明した。

研究グループは,今回発見した経路は,植物などが二酸化炭素を有機物に変換する働きを高める技術を開発する上で,標準型のカルビン・ベンソン回路,既報のトランスアルドラーゼ型経路とともに考慮しなければならないものだとしている。

その他関連ニュース

  • 東北大ら,光合成を最適化するイオン輸送体を解明 2024年11月12日
  • 【解説】動物細胞ながら,光合成もできるプラニマル細胞とは 2024年11月11日
  • 帝京大ら,緑藻の群体増殖には光照射が必須と解明 2024年10月04日
  • 早大ら,光合成微生物で培養肉向け細胞培養機構開発 2024年10月04日
  • 東薬大,シアノバクテリアのストレス順応応答を発見 2024年10月03日
  • 公大,藻×酵母の光合成を利用した排水処理に知見 2024年10月02日
  • 公大ら,人工的な光合成アンテナの構造解析に成功 2024年10月01日
  • 理研ら,光が分裂組織の再生を制御する仕組みを解明 2024年10月01日