筑波大ら,ダイヤモンドNV中心での温度計測に知見

筑波⼤学と北陸先端科学技術⼤学院⼤学は,ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで発現する第⼆⾼調波発⽣(SHG)について,20℃から300℃の温度範囲において,⾼温では屈折率変化による光の位相不整合によりSHG強度が⼤きく減少することを発⾒した(ニュースリリース)。

結晶の対称性,中でも空間反転対称性の有無は,物質の光学的性質を決定する上で重要な役割を担っている。研究グループは近年,ダイヤモンド結晶にNV中⼼を⼈⼯的に導⼊し,ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで2次の⾮線形光学効果であるSHGを発現することを報告した。

今回,研究グループは,NV含有ダイヤモンド結晶に⾚外域の超短パルスレーザーを照射して,第⼆⾼調波,および第三⾼調波の発光強度の温度依存性について研究し,⾮線形光学効果に基づいた温度センサーとしての可能性を探った。

研究では波⻑800nmのフェムト秒パルスレーザーを波⻑1350nmの⾚外パルス光に変換し,NV中⼼を導⼊した⾼純度ダイヤモンド単結晶に励起光として照射し,ダイヤモンドの表⾯近傍から発⽣したカスケード型第三⾼調波(cTHG)と第⼆⾼調波の強度変化を20℃〜300℃の温度範囲で調べた。

室温の20℃においては,複屈折性を有するNV含有ダイヤモンド試料の⾓度を調整することにより,ほぼ完全な位相整合が精巧に⾏なわれた。この時,SHGについては約4.7×10-5,cTHGについては約3.0×10-5の光変換効率が得られている。しかし,温度上昇に伴い,SHGおよびcTHGの強度は急激に減少した。

また,SHGとcTHGの積分強度は,低温領域(100℃以下)では,ほとんど温度変化しないことが分かった。しかし,⾼温領域(150℃から300℃)では,SHG強度,cTHG 強度ともに温度の上昇とともに急激に低下し,室温で得られる信号強度に⽐べてほぼ1桁低い信号強度が観測された。

⼀⽅,NV中⼼を導⼊する前の純粋なダイヤモンド結晶のTHG強度は,温度の上昇とともにゆっくり減少した。ダイヤモンド結晶では,屈折率の温度変化による位相不整合により,格⼦温度の上昇に伴ってSHG強度が減少したと考えられるという。

このように,NV含有ダイヤモンドのSHGから得られる温度センサーとしての感度は,⾼純度ダイヤモンドのTHGから得られる温度感度よりも3倍以上⼤きく,⾮線形光学効果に基づいた温度センシング技術開発への⼤きな可能性を⽰した。

研究グループは今後,ダイヤモンドのNV中⼼から引き出した2次の⾮線形光学効果が,電場や温度のセンシングに幅広く応⽤できることを⽰していくとしている。

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