東京工芸大学名誉教授の渋谷眞人氏は,国際光工学会SPIEにおいて,2022年度ルドルフ&ヒルダ・キングスレイク光学設計賞を受賞した(ニュースリリース) 。
この賞は,著名な光学設計・技術者ルドルフ・キングスレイクおよびヒルダ・キングスレイクを記念した賞で,光学技術の理論や実証を含む光学設計分野での顕著な功績を讃えるもの。
今回の受賞は,渋谷氏が「フォトリソグラフィー用位相シフトマスク」を1980年に発明(1982年公開)して,光学設計の発展に多大な貢献をもたらしたこと,その発明の過程の中で平面波展開による光学系の理解の有用性に着目し,平面波展開に基づく結像理論の基礎を築いたことが評価されたことによる。
半導体回路はマスクに描かれてあるパターンを,レンズでウエハーに転写して作られる。「位相シフトマスク」は,マスクの光が透過する場所ごとに光の進みに差をつけることで,従来の光学理論では結像できないとされていた微細なパターンを焼き付けることができる技術。
この発明の過程で,平面波展開による結像理論の重要性を再発見し,結像理論における問題点を指摘し解決した。さらに,半導体露光装置の結像評価理論の精密化などにつながった。
渋谷氏は,日本光学工業(現ニコン)に入社し,衛星搭載光学系や半導体露光装置などの最先端技術の光学設計・開発に従事した後,2001年,東京工芸大学に入職。同大工学部及び工学研究科で,光学結像理論や光学設計技術にかかわる最先端技術を研究し,主に光学設計に関わる授業を教えてきた。
現在も同大で教佃を執るほか,同大名誉教授として執筆や講演を行ない,またISOやJISの仕事を通じて,光学会・光学産業界の発展に尽力している。なお,表彰式は2022年8月にアメリカ合衆国カリフォルニア州にあるサンディエゴで行なわれる予定。