広島大学の研究グループは,もみ殻に含まれるガラスから,オレンジ色に発光するナノシリコン(シリコン量子ドット:SiDQ)を合成し(発光効率21%),更にそれを用いたシリコン量子ドットLEDの開発に成功した(ニュースリリース)。
世界で毎年1億トン排出されているイネ科のもみ殻はその重量の20%がガラスであり,その処理に苦慮している。
もみ殻に含まれるガラス(SiO2)を還元して得た多孔質性のシリコンを,リチウムイオン電池の負極剤に用いたところ,充放電の高い繰り特性(通常のシリコンの5倍増)が報告されている。また,シリコンを負極剤に用いると市場のリチウムイオン電池の10倍程の容量となる。研究グループは,これをヒントに,もみ殻からSiDQとそのLEDの開発を試みた。
現在の量子ドットは,重金属など材料のため毒性の問題があり,SiDQは発光効率が低い(0.01%),赤外発光であるといった問題がある。しかし,大きさを数ナノメートルにして,表面をデザインしたSiDQは,フルカラーで高い発光効率を与えることができる。研究グループはこれまでの成果をもとに,もみ殻を原料にSiQDを合成した。その結果,オレンジ色で発光するSiQD,更に,それを用いたSiQD LEDを開発した。
具体的には,もみ殻を酸処理して,無機物の不純物を除去。酸処理したもみ殻を焼き,シリカ(SiO2)を得る。このシリカをマグネシウムの粉末と混ぜて加熱して酸化還元反応させ,多孔質性のシリコン粉末を得る。なお,もみ殻からシリカならびに多孔質シリコンを得る収率はそれぞれ100%と86%だった。
この多孔質シリコンを酸処理し(化学エッチング),ナノサイズまで微小化させた。生成物に紫外線を照射するとオレンジ色の発光する(発光効率1-2%)。この表面の水素を炭化水素基(デシル基)に置換して,分散性,耐久性,発光効率を向上させ,SiDQを作成した。
このSiDQはオレンジ色に発光し,その発光効率は21%であった。SiDQは溶液中に分散しているため,LEDの製造は真空フリーかつ低温での溶液プロセスで,簡便な製造が可能。
できあがったLEDの大きさは2cm角で,発光面の面積は4mm2。量子ドットLEDは有機EL同様に面発光が可能。今回のLEDは一般的な市販のLED(砲弾型)の点発光と比べると,40倍程の発光面積に相当する。
研究グループはこの研究について,植物(バイオマス)を原料とした,ならびにバイオ系の天然素材を活用した,世界初のLED製造法となるものだとしている。