光科学技術研究振興財団は,独自に独創的な研究業績をあげ日本の光科学の基礎研究や光科学技術の発展に貢献したと認められる研究者を顕彰する「第4回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者および「令和3年度研究助成」の入選者を決定した(財団HP)。
この賞は,同財団設立の発起人であり初代会長である晝馬輝夫の人類社会への貢献を記念し,光科学に貢献した若手研究者の功績を称えるものとして設立された。
今回,11名の候補者の中から,理化学研究所 脳神経科学研究センター 触知覚生理学研究チーム チームリーダーの村山正宜氏を「第4回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者に決定した。
脳機能のメカニズムを解明するためには,個別の脳領域の働きを解明するだけでは不十分であり,領域間の相互作用の解明が必須となる。
従来の顕微鏡では不可能であったこの目的を達成するために,村山氏は2研究所,6大学,3企業,そして研究開発機構の研究者らを結束・先導し,顕微鏡用の巨大な対物レンズと大口径高感度光検出器の開発を行ない,広視野・高解像・高時間分解・高感度を満たす蛍光顕微鏡を作ることに成功した。
新しく作られた顕微鏡レンズや光検出器は,いずれも,これまでにない常識外れのスケールのものだという。これらによって,観察視野の拡大,空間分解能の向上,計測の高速化の条件が満たされ,世界最先端の2光子顕微鏡が実現した。
また,この顕微鏡を覚醒したマウスの脳に用いることにより,15以上の領域で同時に活動する16,000個以上の神経細胞の反応を記録することに成功した。
いわば,木も森も同時に見ることを可能にしたこの成果により,脳組織は情報処理の効率が極めて高い,スモールワールドネットワークを形成していることを明らかにした。
この神経細胞の広域ネットワークの動的構造の解明により,知覚や認知,運動制御,記憶,学習などの高度な脳機能の究明に繋がると考えられるほか,免疫,がん,植物など,さまざまな生物分野での応用が期待されるという。
以上から,同財団は「晝馬輝夫 光科学賞」の授与を決定した。村山氏には,賞状楯,賞牌のほか,副賞500万円が贈られる。また「令和3年度研究助成」の入選者36名も決定した。
なお,3月3日に,ホテルクラウンパレス浜松(静岡県浜松市)で行なわれる贈呈式では,村山氏の受賞講演および令和元年度研究助成の成果報告講演(オンライン併用)を開催する。