理研ら,接着剤不要の超柔軟導電接合技術を開発

理化学研究所(理研),東京大学,早稲田大学は,接着剤を用いずに高分子フィルム上に成膜された金同士を電気的に直接接続する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

ウェアラブルデバイスの実用化には,個々のセンサーや電源の高性能化とともに,複数の電子素子を集積化できる配線技術・実装技術が求められる。これらの技術には,金属のような導電性と柔軟性を損なわない低い剛性,低温のプロセスによる配線が必要となる。

しかし,従来の電子素子同士の配線方法は,導電性接着剤層の厚みによって接合部の剛性が増加し,十分な接着力と高導電性を実現するためには,加熱・加圧工程が必要で電子素子の配線は困難だった。

一方,表面活性化接合など従来の金属の直接接合技術は,接合面の許容表面粗さRMSが1nm未満と非常に高い平坦性が必須であり,フレキシブル基板上の金属同士の接合に適応することは不可能だった。

研究グループは,2μm厚の高分子材料パリレン基板上に蒸着した金電極(表面粗さRMS=約7nm)に対して水蒸気プラズマを照射し,大気中で金電極同士を接触させることで,金属結合が生じることを発見。この新しい接合方法を「水蒸気プラズマ接合(WVPAB: Water Vapor Plasma-assisted Bonding)」と名付けた。

WVPABで接合した金電極の断面を観察した結果,上下別々の基板上に蒸着された二つの金電極の一部がWVPABによって一体化(境界線が消失)し,強固に接合していることを確認した。

従来接合手法の異方導電性テープ(ACF)で接合した薄膜サンプルの接合部と柔軟性を比較したところ,ACF接合の最小曲率半径が1mm以上であるのに対し,接着層がないWVPABの最小曲率半径は0.5mm未満と,優れた柔軟性を確認した。

また,機械的耐久性と熱安定性にも優れていることを確認した。曲げ半径2.5mmで1万回繰り返し曲げた後でも,電気抵抗の変化は1%未満だった。大気中,100℃で500時間加熱しても電気抵抗の上昇は観察されず,むしろ金属同士の結合が促進されることで電気抵抗が8%減少したという。

さらに,厚さ約3μmの超薄型有機太陽電池と超薄型有機LED,複数の超薄型配線を,WVPABにより相互接続したところ,WVPABによる素子や基板の損傷は無く,光照射で有機LEDが発光することを確認した。このデバイスは,配線や接合部を含めた全体が柔軟な超薄型のフレキシブルエレクトロニクスシステムとなる。

研究グループはこの技術について,プラズマ条件や接合用電極の表面粗さRMSを調整することで,幅広い素材に対応できる汎用的な集積技術となる可能性があるとしている。

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