名大ら,大面積2層グラフェンに超電導起源を観察

名古屋大学,米マサチューセッツ工科大学,関西学院大学は,従来の数千倍である3x5mm2以上の面積を持つツイスト2層グラフェンを作製し,フラットバンドの直接観察に成功した(ニュースリリース)。

厚さ1原子層の炭素物質であるグラフェンを,わずかに回転させて積層した物質を「ツイスト2層グラフェン」と呼ぶ。

グラフェンに,ツイスト角という新たな自由度を加えることで,多くの新しい物性が発現することが報告されている。このように,2次元物質を回転させて積層することによる新たな技術は,「ツイストロニクス」と呼ばれる。中でも2018年には,魔法角(magic-angle)と呼ばれる1.1度ツイスト2層グラフェンにおいて超伝導が報告され,注目を集めた。

しかし,ほとんどの実験は,グラファイトを機械的に剥離して得た,大きくても0.05 mm角程度の小さな試料を用いて行なわれてきた。より多彩な物性測定を行ない,ツイストロニクスを実現するためには,大面積のツイスト2層グラフェン試料を作製する技術を開発する必要があった。

研究グループは,SiC熱分解法によって作製した5x5mm2の単一方位グラフェンを転写することによって,ミリメートルスケールのツイスト2層グラフェンを作製することに成功した。

SiC熱分解法では,SiC単結晶基板をAr雰囲気中1700度程度で加熱すると,表面からSiのみが脱離して残ったCがグラフェンを形成し,絶縁性基板上に大面積の単一方位グラフェンを成長することができる。この手法で作製したグラフェンを引き剥がし,別のグラフェン/SiC基板上にツイスト角θ分だけ回転させて貼り付けることで,大面積のツイスト2層グラフェンを作製した。

さらに,角度分解光電子分光によって魔法角TBGの測定を行なったところ,超伝導の起源と考えられるフラットバンドを直接観察することにも成功した。

研究グループはこの成果により,ミリメートルスケールのTBG試料を用いて,これまでできなかった計測手法で実験を行うことができるようになり,超伝導の起源の解明や転移温度向上,ツイストロニクスとそれによる新しい物質開発の実現への道を拡大し,より高度な情報通信技術に貢献するとしている。

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