OIST,発生期の免疫細胞の移動経路を明らかに

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,脳の免疫細胞であるミクログリア(小膠細胞)を,受精後24時間から60時間のゼブラフィッシュ胚において追跡し,発生期の網膜にどのように移動するのかを明らかにした(ニュースリリース)。

脳の免疫細胞であるミクログリアは,神経変性疾患や外傷性脳損傷に対する第一の防衛線となる。

ミクログリアは損傷部位に集まり,感染・損傷した神経細胞やその死骸を除去する掃除機のような働きをしたり,脳が発達する時期に不要なシナプスを刈り込むことで,脳の恒常性(生存に必要な安定状態)を維持する。

しかし,ミクログリアは本来,脳で発生するものではなく,その前駆細胞は末梢中胚葉と呼ばれる胚の別の部分で生まれ,胚の発達に伴って脳へ移動する。前駆細胞がどのようにして脳への移動経路を見つけるのか,このプロセスは解明されていない。

ミクログリアは人間を含むすべての動物の脳の恒常性維持に重要な役割を果たしていることから,これを解明することによって,健康上の多くのメリットがもたらされると期待されている。

最初にミクログリアは目の神経組織である網膜に定着するが,研究グループは,脳全体に存在するミクログリアがどのようにして網膜に定着するのかを調べた。また,ミクログリアが網膜に適切に定着するためには,眼球内に血管が形成されていることと,網膜内で神経細胞が生み出されていることの,2つの要素が重要だと明らかにした。

研究グループは,ミクログリアが網膜へ移動し定着する過程でこの2つの要素が必須であることを明らかにするため,受精後24時間から60時間までの透明なゼブラフィッシュ胚でミクログリアの前駆細胞を蛍光標識して追跡したところ,前駆細胞は末梢中胚葉で発生した後,まず卵黄に移動し,その後,脳の各部位に向かって移動を開始した。

ミクログリアは網膜の入り口に到着すると,網膜と水晶体の間の血管に付着したまま,網膜内で神経の前駆細胞から新たに神経細胞が生み出される神経新生の開始を待つ。そして,網膜の神経新生が起こっている領域にのみミクログリアが浸潤し,受精後60時間頃にはミクログリアは網膜全体に広がった。

研究グループは,血管形成と神経新生の重要性を裏付けるため,血管形成と神経新生を阻害した。その結果,どちらの実験でもミクログリアは網膜内に移動し定着することができず,ミクログリアが発生期の脳の内部を移動する仕組みが分かった。

研究グループはこの成果により,神経変性疾患を対象としたミクログリアの幹細胞を標的とした治療法が開発されるかもしれないとしている。

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