NAOJら,望遠鏡画像からAIで希少銀河を検出

国立天文台(NAOJ)と東京大学らは,産業的利用から医療診断まで幅広い分野で実用化が進む「異常検知AI」を用いて,すばる望遠鏡で得た大量の銀河画像の中から特異な性質を持った希少銀河を検出することに成功した(ニュースリリース)。

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム:HSC)を用いた大規模探査(すばる戦略枠プログラム)の進行により,高感度で撮影された銀河の画像をこれまでになく大量に入手できるようになった。

この探査プログラムで検出された5億を超える天体の中には,発見数が少ないために統計的解析が難しかった希少銀河や,未知の種類の天体が紛れている可能性がある。しかし銀河の数が膨大であるために,そのような天体を探しだす作業は,人の手ではもちろん,コンピューターを用いた既存の解析手法でも時間がかかりすぎてしまう。

この問題に対し,機械学習を用いて大量のデータを効率的に処理する手法が近年検討されている。その中で研究グループは「異常検知」と呼ばれる手法を用いて,すばる望遠鏡で得られたデータから希少天体や未知天体を探査するSWIMMY(Subaru WIde-field Machine-learning anoMalY)という探査プロジェクトを立ち上げた。

異常検知は教師なし機械学習の一種で,「ブラインド」に,つまりラベル付けされた大量の教師データを必要とせずに,入力されたデータ内から珍しい特徴を持つデータの抽出を行なう。

SWIMMYプロジェクトの第一段階として,研究ではHSCで撮影された大量の銀河画像の中から異常検知手法を用いた希少天体の探査を行なった。用意した約5万枚の銀河画像をコンピューターに学習させ,中心部分に珍しい色特徴や明るさを持つ銀河(全サンプルの約12%)を検出した。

既存の銀河カタログと照合した結果,検出した候補天体の中には,クェーサーや,爆発的に星形成をしている銀河など,珍しい特徴を持つ既知の銀河を6割程度の割合で選択できていることがわかった。

またスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)で取得された分光データを確認したところ,多くの候補天体が一般的な銀河に比べ非常に強い輝線を示す天体であることがわかったという。

研究グループはこのことから,既存の銀河カタログに含まれておらず,この手法によって初めて検出された候補天体の中には,これまで見落とされてきたクェーサーや極度に強い輝線銀河が多く含まれていることが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • カバーガラスブランドStarveil™の新製品「BDX-3」

    日本電気硝子、宇宙用超薄板カバーガラス「BDX-3」を開発 波長300nmの透過率を0.1%に減

    日本電気硝子は、宇宙用超薄板カバーガラス「Starveil(スターベイル)」の新製品「BDX-3」を開発し、有償サンプルの販売を開始した(ニュースリリース)。放射線による着色を抑えるとともに、従来品「BDX-2」と比較し…

    2026.10.23
  • 「エッジAI半導体を実現する3Dヘテロ集積技術」プロジェクトの対象技術と課題

    東北大、半導体3D集積の産学連携組織「T-CHIPS」発足 光チップの異種集積も視野

    東北大学は、半導体先端パッケージングと異種チップ集積技術の研究開発を推進するコンソーシアム「T-CHIPS」が発足したと発表した(ニュースリリース)。プロセッサーやメモリ、シリコンフォトニクスチップなど、異なる機能を持つ…

    2026.10.21
  • 光ファイバセンシングを活用した漏水位置特定システム

    NTT、光ファイバセンシングとAIで水道管の漏水位置を15分で特定

    NTTは、福岡市管工事協同組合と共同で、光ファイバセンシングとAIを組み合わせた水道管の漏水位置特定技術の実証に成功した。地下に埋設された給水管から生じる微弱な振動を光ファイバで検出し、AIで解析することで、水平誤差75…

    2026.10.21
  • 東大が挑むAI×先端レーザー加工 Photonics Innovation 2026 プレイベントを開催

    オプトロニクス社は、11月10日(火)~12日(木)にパシフィコ横浜で光技術展示会「Photonics Innovation 2026/パワーレーザーPlus 2026」を開催する。そのプレイベントとして、東京大学 物性…

    2026.10.09
  • ノーベル賞2026を光技術と材料から振り返る 光遺伝学、IceCube、分子の「右と左」

    2026年のノーベル賞は、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学3賞が出そろった。研究対象は脳、宇宙、化学反応とそれぞれ異なるものだったが、光技術という側面から眺めると興味深い共通点が見えてくる。光は、生命現象を操作…

    2026.10.07

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア