北大,薄膜の電気抵抗が厚さで周期振動すると発見

北海道大学の研究グループは,薄膜の電気抵抗が厚さに依存して周期的に振動する現象を発見した(ニュースリリース)。

超薄膜,量子細線,または量子ドットを作製することにより,電子の動きを制限した低次元系を人工的に創成することができる。

ただし,複数の元素を正確に制御することは技術的に難しい。そこで研究では,分子線エピタキシー法を用いた原子の安定供給により,高品質のCaRuO3超薄膜を作製し,人工的に創成した2次元系において発現する現象を調べた。

作製したCaRuO3超薄膜は,厚さが0.8-16nmで,その表面の粗さは199pmと原子の大きさ程度の平坦さを確認した。これによってnmを上回るpmオーダーの超精密制御に成功した。

様々な厚さのCaRuO3超薄膜の電気抵抗率を測定した結果,CaRuO3超薄膜の電気抵抗率は膜厚に依存して周期的に変化することを発見した。厚さが10.1nmの CaRuO3超薄膜は金属だが,厚さを薄くすると電気抵抗率は上昇し,厚さ8.5nmでは300Kと4.2Kでそれぞれ1×103と2×108mΩcmとなり,典型的な絶縁挙動を示した。

さらに厚さを薄くすると,電気抵抗率の大きさは再び減少し,最初の金属状態に戻る。厚さ7.1nmと8.5nmの薄膜はわずかなサイズの違いにもかかわらず,電気抵抗率は室温で3桁,低温で9桁以上の劇的な変化を示した。

0.8〜16nmの異なる膜厚におけるCaRuO3の4.2及び300Kでの電気抵抗率をプロットしたところ,直線性フィッティングから,膜厚に応じて電気抵抗率が2.5nm周期で変動していることがわかった。後に,一つの膜をエッチングすることによっても光学強度の周期的な変化を再現し,桁外れな電気抵抗変動を伴うサイズ効果の発見を確定した。

ビスマス材料に代表される量子サイズ効果では,室温で~10%,低温でも数倍程度の電気抵抗率の変動が観測されていた。この従来の報告と比較すると,今回の研究によって室温で1万倍,低温では10億倍を超える性能向上を達成した。

研究グループは,今回の研究における結晶異方性やこれまでの電子状態の報告から,モット絶縁体とパイエルス転移が共存する新奇なメカニズムを提唱した。また,複数の元素を精密制御して超薄膜における2次元系化合物を創成したことによって,人工低次元での多様な性質の開拓に貢献する成果だとする。

さらに,スイッチング素子などの動作が安定し,圧力・磁場・電圧などの制約がなく,幅広い分野への適用が可能。単一の薄膜でサイズ効果を示したことにより,あらゆる形状のデバイスへと展開が可能だとしている。

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