名大ら,CNT 1本による極微小アンテナを開発

名古屋大学と豊田中央研究所は,大規模なデジタルデータを受信可能なカーボンナノチューブ(CNT)1本から成る極微小アンテナを開発した(ニュースリリース)。

IoTやAIの利用拡大により,多様な情報を同時に,高精度で検知・処理するために,一つのシステムに多数のセンサーを設置する必要がある。これに伴い,センサーの小型化の重要性が高まっている。

従来のセンサーでは,情報検知・受信を司る「アンテナ」の大きさは,受信信号をアンテナが直接,電気的な信号に変換するため,受信する信号(電磁波)の波長によって決まっていた。

今回研究グループは,CNTを機械振動子として用いることで,極微小ながら安定した信号受信が可能なアンテナを実現した。高い機械強度と優れた電気特性を持つCNTを用いることで,従来では数m~数cmという大きさが必要なアンテナをナノスケールにまで小型化した。

今回作製した機械振動子アンテナは,1本のCNTから成る片持ち梁が,小さな空間を介して微小電極と対向している構造を持つ。この微小電極とCNT間に直流電圧をかけることで,CNT先端から電子が飛出して電流が流れる。

ここに,外部から信号(電磁波)が照射されるとCNT内の電子に静電力が働き,到来信号に合わせてCNTが機械的に振動する。CNTと微小電極間に流れている電流の大きさは,両者の距離によって変化する。CNTが機械振動を行なうと,この距離が振動に合わせて増減するため,流れる電流には到来した信号の情報が反映される。

作製したナノスケールアンテナを用いて,実際にカラー画像のデータを受信した際の動作を実証した。微小なアンテナは到来する信号から受け取るエネルギーも小さく,ノイズの影響を受けやすいが,符号誤り訂正といったデジタル通信技術を組み合わせることで高い精度で,データの受信が可能であることを確認した。

このアンテナが現在主流である80MHz帯域幅を持つWiFi環境でも動作すると仮定した際の通信速度は70Mb/s程度となり,画像データやビデオ通話のような大容量データ通信への応用の可能性を示すものだという。

研究グループはこの技術について,将来的に通信システム,人や物を検知するセンシングデバイスの超小型化を介してIoT分野への貢献が期待されるとしている。

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