府大ら,強誘電体の帯電ドメイン壁の構造を可視化

大坂府立大学,東レリサーチセンター,米ラトガース大学,米テキサス大学は,原子分解能を有する先端的走査透過型電子顕微鏡を用いて,強誘電体の帯電ドメイン構造を直接観察することに成功した(ニュースリリース)。

強誘電体は,自発分極の向きによりメモリ機能を持つことに加え,自発分極の大きさの制御による電気信号と機械的動作の変換,熱と電気信号の変換や,電気エネルギーの蓄積など,多面的な用途にわたる幅広い展開が期待されている。

このような強誘電体が示す機能特性は,電場を加えたり温度を変えたりすることによる分極反転の起こりやすさに大きく依存する。この分極反転動作は,固体内で分極方向の異なるドメイン同士の境界(ドメイン壁)が移動することによって生じる。このため強誘電特性の理解には,強誘電体内でドメイン壁がどのように存在しているのか,またそれらがどのようにミクロな運動をしているのかを明らかにする必要がある。

現在,強誘電体のドメイン壁は,外部の電場によって制御できることや高密度に生成させることができるため,高容量記録媒体の開発が行なわれている。特に,強誘電体の電気分極が向かい合った強誘電ドメイン壁(帯電ドメイン壁)の幅は数ナノメールであるにも関わらず,そのドメイン壁において電気伝導度が大きく変化する性質があることが見いだされ,電子デバイスへ応用が期待されている。

このような特異な帯電ドメイン壁は,一部の強誘電体で発見されているが,帯電ドメイン壁は,エネルギー的に不安定であるため,安定化のメカニズムの解明が重要な課題となっていた。このため,帯電ドメイン構造を利用して強誘電デバイスを作製するには,帯電ドメイン構造の形成メカニズムを明らかすることが重要となる。

層状ペロブスカイト強誘電酸化物をもつCa3-xSrxTi2O7では,このようなドメイン構造が明瞭に観察されていたが,その構造は明らかでなかった。そこで走査透過電子顕微鏡を用いて帯電ドメイン構造を原子スケールで可視化することともに,第一原理計算を用いた帯電ドメイン構造のエネルギー計算を行なった。

その結果,従来エネルギー的に不安定であると考えられている帯電ドメイン構造が,物質内で安定に存在するメカニズムとして,帯電ドメイン壁に偏析しているストロンチウム原子の存在によりドメイン壁での電荷の蓄積が抑制され,帯電ドメイン構造がエネルギー的に安定して存在していることが分かった。

研究グループは,様々なアルカリ希土類元素および遷移金属元素を置換元素として用いた試料を作製し,その解析を行なうことで帯電ドメイン壁の安定化機構の解明を発展させるっとしている。

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