横市大ら,天然物由来の量子ドットをデバイス化

横浜市立大学,オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO),横浜国立大学は,天然物由来のカーボン量子ドット(C-QDs)からデバイスを試作し,エレクトロルミネセンス(EL)の観測に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

近年,新たな発光材料としてC-QDsが注目され,ディスプレーや照明などの大規模な市場への展開に向けて,ELデバイス等への実用化への期待が高まっている。

研究グループは,天然資源の有効利用や環境調和性の観点から,天然物からのC-QDsの簡便合成法(2019年)や高効率合成法(2020年)の開発に相次いで成功し,環境にやさしく安価で簡便な材料を発明してきた。

しかし,天然物由来のC-QDsは,固体状態では発光強度が著しく低下するため,ELへの応用は限られていた。そこで今回,天然物由来のC-QDsからのELデバイス試作および発光観測に成功した。

天然物由来のC-QDsは,炭素源として植物の種(フェネグリーク種子)から,研究グループが先行研究で開発した熱分解法によって得た。ELデバイスは,CSIROで開発されたデバイス作製技術によって透明電極(ITO),キャリア輸送層(PVKおよびBP4mPy),発光層(天然物由来のC-QDsをエタノールに分散してスピンコートすることによって作製)から成る積層構造として構築した。

試作デバイスから,ブルー・グリーンの発光状態(スペクトル波長507nm,CIE表色系色度(0.241,0.285))が肉眼でも十分に観察できたという。

また,固体状態で観測されたELは,研究で作製したC-QDsの天然物由来のアミノ基などの表面官能基や塩化カリウムなどのミネラルに起因して発生していることを明らかにした。

ELの発光性能を示す電圧—電流—輝度(V-I-L)曲線を確認したところ,最大EL輝度は115.4cd/m2であり,数少ない人工物由来の高性能なC-QDsと同程度の強度を示した。

電流および発光の開始電圧の差が見られたが,電子と正孔(ホール)のキャリア注入のための障壁によるものと考えらるという。

以上の結果から研究グループは,天然物由来のC-QDsがELデバイスとして実用化できる環境調和型材料であること,他の天然物においても同様に応用できる可能性があることを示した。今後はデバイス構成(構成要素,構造等)の最適化を行ない,性能向上と実用化検討を目指すとしている。

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