東北大ら,放射光X線で地球の内核の構造を解明

東北大学と高輝度光科学研究センターは,地球の核の条件での高温高圧実験によって,鉄-ニッケル-シリコン(Fe-Ni-Si)合金の相平衡関係を明らかにし,この合金の融点付近の高温領域においてB2構造と六方最密充填(Hcp)構造という二つの結晶構造が共存することを解明した(ニュースリリース)。

地球の内核は,ニッケルを5-10wt%含むと考えられるが,内核の温度圧力において鉄-ニッケル合金よりも5%程軽いため,鉄およびニッケルより軽い元素を含んでいると考えられている。

研究では,大型放射光施設 SPring-8のBL10XUにおける世界最高輝度の放射光X線とダイヤモンドアンビルセルを用いた地球核の条件での高温高圧実験によって,Fe-Ni-Si合金の相平衡関係を明らかにした。

その結果,この合金の融点付近の高温高圧条件においてB2構造とHcp構造という二つの結晶構造が共存する領域が存在することを解明した。

そして,Hcp構造を持つ合金はシリコンの濃度が低く,B2構造を持つ合金はシリコンに富んでいることも明らかにした。さらに,今回の高温高圧実験により,これらの合金の高温高圧下での体積変化を決定した。

以上の実験結果に基づいて,地震波速度の解析から得られる内核の密度と縦波速度を説明するHcp構造とB2構造の合金のシリコンの濃度,二種類の合金の存在割合を決定した。

最近の地震学研究によると,内核は極めて遅い横波速度,低い粘性率,縦波速度の異方性などの特徴的な性質を持つと報告されているという。このような内核の性質は,これまで予想されているHcp構造の一種類の合金では説明が不可能だった。

しかし,研究グループは今回の成果により,内核がHcp構造とB2構造の二種類の合金の混合物からなる場合には,これらの共存する二種類の合金の相互作用によって,このような特徴的な性質を説明出来る可能性があることが明らかになったとしている。

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