北大ら,太古の氷からアルゴンの検出に成功

北海道大学,国立極地研究所,長岡技術科学大学は,グリーンランド氷床の深部氷中に形成される空気包接水和物(エアハイドレート)結晶中に,太古の大気微量成分であるアルゴンが含有されていることを,SEMとEDSによる新しい検出法を用いて発見した(ニュースリリース)。

南極やグリーンランドには夏でも融けない巨大な氷体(氷床)が存在し,雪から氷に変化するときにその時代の大気を気泡として氷中に取り込む。

毎年の積雪により氷床の深い氷ほど古い大気を保存しており,太古の大気の直接解析が期待されるが,氷床深部では気泡は圧縮されて消滅し,無色透明で直径1mm以下の微細なエアハイドレート結晶に変化する。結晶内に大気の主成分である窒素,酸素が存在することは確認されているが,それ以外の微量成分は発見されていなかった。

研究では,大気の第三成分であるアルゴンが氷床深部でエアハイドレート結晶中に貯蔵されていることを直接観察することを目的とした。しかしアルゴンは,これまで窒素や酸素の検出に用いられていたレーザーラマン分光法では検出できないため,新たにSEMとエネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いた手法を開発した。

試料には,北グリーンランドの約2万年前の氷河期の氷(1,548m深)と約12万5千年前の間氷期の氷(2,406m深)中に存在していたエアハイドレート結晶を用いた。

この氷試料を-20℃の低温室内で観測用に整形し,SEM試料室中の-140℃まで冷却できるステージ上に設置した。試料室は窒素ガス120Paの低真空状態にして,安定した電子顕微鏡観察ができるように工夫し,エアハイドレート結晶がほぼ分解せず観察できることを確認した。

そこでこの結晶の内部でEDS測定を行なったところ,得られたスペクトルから,窒素(N),酸素(O),アルゴン(Ar)が検出された。一方エアハイドレート結晶の周囲の氷のEDS測定ではアルゴンは検出されず,水(H2O)分子中の酸素(O)と,試料室内の窒素(N)の信号が観測された。

これらのスペクトルの差を取り,エアハイドレート結晶中に大気成分である窒素(N),酸素(O)に加えて,アルゴン(Ar)が存在することを確認し,SEMで氷コア中のエアハイドレート結晶中に窒素,酸素,アルゴンが存在することを直接確認することに,世界で初めて成功した。

研究グループは,今回開発した手法でエアハイドレート結晶中のアルゴンの濃度を測定できれば,太古の大気中にアルゴンがどれくらい存在し,地球の環境変化とともにどのように変化したかという氷コア解析の精度を向上できるとしている。

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