東北大,宇宙背景放射の偏光面の回転機構を提唱

東北大学の研究グループは,アクシオンがダークマターのエネルギーによって質量を得ることで運動を開始する機構を提唱した(ニュースリリース)。

宇宙マイクロ波背景放射は宇宙に満ちている光で,その観測から宇宙の様々な情報を得ることができる。

昨年,宇宙マイクロ波背景放射の偏光データの解析によって,標準宇宙論では説明のできない,偏光面が回転している兆候が指摘された。これは特に鏡に映す変換のようなパリティ対称性を破る新しい効果の存在を示唆するもの。

パリティ対称性を破り,光の偏光面を回転させるような効果を持つ新しい素粒子として,アクシオン的粒子(axion-like particle,以下アクシオン)がある。アクシオンは量子アノマリーと呼ばれる機構を通じて一般に光子と相互作用をすることが知られている。

アクシオンの運動はパリティ対称性を破るため,この相互作用を通じて光の偏光面が回転する。宇宙マイクロ波背景放射の偏光面が回転していたことが事実だとすると,それが放射された宇宙の晴れ上がり以降にアクシオンが運動を始めたことを意味する。

研究グループは,アクシオンがなぜ宇宙の晴れ上がり以降,現在までに運動を始めたのかという疑問点を指摘し,それを解決するダークマターに着目した機構を提案した。

ダークマターは現在の宇宙に大量に存在しているが,そのエネルギー密度が宇宙論的に重要になる時期(物質優勢期)の始まりは,宇宙の晴れ上がりの時期と非常に近いことがわかっている。このことから,アクシオンがダークマターのエネルギーを通して運動を始めることができれば,必然的に宇宙マイクロ波背景放射の偏光面に影響を与えることを示した。

アクシオンがダークマターのエネルギーを通して質量を持つためには,それらの間に何らかの相互作用が必要になる。研究では,標準理論の四つの力(強い相互作用,弱い相互作用,電磁相互作用,重力)に加えて,電磁相互作用とよく似た未知の力の存在を仮定し,その磁荷を持つ磁気単極子がダークマターとなるシナリオに着目した。

このとき,アクシオンが未知の力と量子アノマリーを通して相互作用している場合には,ダークマターである磁気単極子のエネルギーを通して質量を持ち,物質優勢期になると運動を始めることを明らかにした。

ダークマターと宇宙マイクロ波背景放射の偏光は一見すると全く関係がないが,アクシオンという新粒子を通して密接に関係することになる。光とダークマターの両方と相互作用するアクシオンの存在が今後の実験で確定的なものとなれば,これは宇宙論のみならず,素粒子理論にとっても重要な成果になるとしている。

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