農工大ら,MEMSの機械的非線形性を熱で低減

東京農工大学,北京工業大学,東京大学は,MEMS素子の機械的非線形性を熱効果により低減し,素子の信号対雑音比を10倍以上増大させることに成功した(ニュースリリース)。

MEMSはスマホの加速度センサや赤外線センサをはじめ,多くの電気製品で使われている。

その中で共振型MEMS素子は高感度のセンサとして広く応用されている。しかし,MEMS素子では振幅の大きさによって共振の周波数が変動してしまう機械的非線形性が存在するため,大きな振幅で励起された場合,MEMS素子の共振周波数は不安定になる。

それを避け,線形振動領域を保つためには,振動振幅は数十nm程度の非常に小さい値にする必要があった。そのため,MEMS素子を用いた計測における信号対雑音比が制限されていた。

一般的なMEMS両持ち梁構造は,振動振幅が増大するにつれ,梁がより伸張され,材料が堅くなる性質がある(hardening)。従って,振動振幅の増大とともに共振周波数は上昇し,hardening非線形性を示す。

研究では,MEMS梁に薄膜抵抗を作製し,それを利用してMEMS梁を電気的に加熱することによって,MEMS梁の非線形性を強く低減できることを発見した。非線形を制御されたMEMS素子においては,線形領域の振動振幅が,非線形性を制御していないMEMS素子のそれに比べて,10倍以上に増大できることを確認したという。

この非線形性制御効果の物理的機構は,熱応力によるMEMS梁の座屈効果による。この座屈効果は,MEMS共振にsoftening非線形性をもたらし,MEMS梁に本来存在するhardening非線形性を補償し,全体的非線形性を低減した。この研究は世界で初めて熱効果によるMEMS共振器の非線形制御を発見したものだという。

従来のMEMS共振素子は,材料の持つ非線形性のために,線形領域での出力信号が非常に小さいという問題があった。今回の成果を用いてMEMS素子の非線形性を強く抑制すれば,MEMS素子の信号対雑音比を大幅に向上させることができるため,研究グループは,超高感度センシングへの応用展開が期待できるとしている。

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