筑波大ら,光デバイスにも適した新規半導体を生成

筑波大学,東京工業大学,高知工科大学,東京農工大学,名古屋大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,菱面体硫化ホウ素という層状の物質の表面を剥離することにより,硫化ホウ素シートの生成に成功した(ニュースリリース)。

ホウ素化合物はさまざまな安定構造を示すことが知られており,硫黄とホウ素が1:1の割合で構成される硫化ホウ素シートにも安定構造が存在することが理論的に予測されていた。

その中には,超伝導を示す物質から半導体となる物質までが含まれており,優れた熱電性能や水素吸蔵特性を示すことも予測されていた。いずれの場合も,原子4層程度の厚みで構成される二次元状の物質であることは予測されていたが,実際に合成されたことはなかった。

研究グループは,スタート物質として数件しか合成報告がのない菱面体硫化ホウ素を合成した。この試料は純度99.2%以上であり,ホウ素と硫黄のみで構成されていることを確認した。また,構造やホウ素と硫黄の結合状態を確認するとともに,高純度であること,725Kまでの加熱に対しても安定であることを確認した。

次に,剥離した硫化ホウ素シートが試料内に存在していることが分かり,安定であることも示された。このシートを重ねていくと,バンドギャップが最大で1.0eV程度も変化し,複数の測定法によって同様の結果が得られた。また,電子の有効質量が軽いn型半導体であることも計算により示された。

さらに,菱面体硫化ホウ素をスコッチテープ法で剥離して硫化ホウ素シートを作成したところ,剥離前は厚み130nm程度であったのに対して,剥離後は厚み1nm(原子数層分程度)の非常に薄いシートが観察された。また,硫化ホウ素シートは,菱面体硫化ホウ素と同様に,ホウ素と硫黄が共有結合性の結合をしていることが分かった。

硫化ホウ素シートを利用し,光の波長によって電流のオンオフを制御できる光電気化学的スイッチを作製したところ、菱面体硫化ホウ素では可視光の照射でも電流が流れるのに対して,硫化ホウ素シートでは紫外光を照射した場合にのみ電流が流れるという、光スイッチング特性を持つデバイスが得られた。

硫化ホウ素シートは新しい半導体部品となる可能性がある。特に,硫化ホウ素シートを重ねることでバンドギャップが最大で1.0eV程度も変化することは,太陽電池やトランジスタなどの電子デバイス部品や,光触媒として用いる上で重要な特性となる。

このため研究グループは,理論予測されていた熱電材料や水素貯蔵材料としての応用に加え,光触媒や電池材料,光に反応するセンサー材料などへの展開も考えられるとしている。

その他関連ニュース

  • 北大,水と光で作製した半導体界面の電子構造解明 2022年01月14日
  • SCREEN,次世代パターン用直接描画装置を開発 2022年01月13日
  • 名大ら,大面積2層グラフェンに超電導起源を観察 2021年12月15日
  • 2021年半導体製造装置市場,史上初の1000億ドル超 2021年12月14日
  • 日立ハイテク,EUV向け電子線検査システムを開発 2021年12月14日
  • 2022年,半導体デバイス世界市場50兆5,296億円 2021年11月29日
  • 鳥取大ら,極薄膜物質の原子配列解析を加速 2021年11月25日
  • 理研,ナノシートで繊毛運動に似た輸送機能を実現 2021年11月24日