KDDI総合研究所とジャパンディスプレイ(JDI)は,電波の反射方向を任意な方向へ変えられる,28GHz帯液晶メタサーフェス反射板の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
5Gで利用する28GHz帯などの高い周波数は,超高速・大容量な通信サービスを提供できる一方で,電波の直進性が強く,基地局のアンテナが見通せないビルや樹木の影などに電波が届きにくい場所(カバレッジホール)が発生しやすい特徴がある。
このような場所へ5Gサービスを提供する方法として,基地局からの電波を特定方向に反射させてカバレッジホールへ届ける「メタサーフェス反射板」が注目を集めており,KDDI総合研究所は2021年1月に28GHz/39GHz帯デュアルバンド透明メタサーフェス反射板の開発を行なうなど研究開発を進めている。
今回,KDDI総合研究所とJDIは,電波の反射方向を電気的に変更可能な,方向可変型液晶メタサーフェス反射板を開発した。方向可変型液晶メタサーフェス反射板は,ディスプレーなどの光制御に使われる液晶を電波の反射制御に応用し,反射素子とグランド(地板)との間に液晶層を取り入れ,反射素子を電極として兼用し電圧により電気特性(誘電率)の変更を可能とし,電気的な電波の反射方向制御を実現した。
試作した方向可変型液晶メタサーフェス反射板の小形サンプルを用いて電波無響室で実証実験を行ない,28GHz帯の電波を設定した反射方向に変更できることを確認した。実証実験では,方向可変型液晶メタサーフェス反射板の電圧の設定を変更することで,入射した電波の反射方向が,ある受信アンテナから別の受信アンテナの方向に変更され,各反射方向で電波が受信できることを確認した。
今回の成果により,電波環境の変化によるカバレッジホールの位置の変化や,時間帯によるユーザーの分布変化にあわせて,柔軟なカバレッジホール対策ができるようになるという。今後,両社は実用化を目指し,5Gのエリアでの実証実験を進めていくとしている。