宇都宮大学の研究グループは,赤外光での光硬化性樹脂を開発し,それを用いた自己形成光導波路による光通信部品間の自動接続に成功した(ニュースリリース)。
シリコンフォトニクスは特に情報処理の分野で,シリコン電子回路内や,チップ間でのインターコネクションのボトルネックを解決しうる技術として注目されている。
シリコンフォトニクスではサブマイクロメートルサイズのシリコン光回路が光配線として用いられるが,シリコン光回路と外部光部品である光ファイバ(コア径約10μm)との接続における接続損失と実装精度が課題となっている。
また,光ファイバまたはシリコン光回路と,受発光素子との間の接続に関しても,高効率・簡易実装技術が求められており,これら光素子間の無調芯接続(パッシブアライメント)化技術が重要課題の1つとされている。
これに対し研究グループは,自己形成光導波路の応用について研究を行なった。自己形成光導波路は,光硬化性樹脂中に光ファイバなどから光を出射させ,ビームの伝播方向に自動的に光回路を作製する3次元光配線技術。
この技術は,対向して配置した軸ずれのある光素子間も自動的に接続することが可能であり,光配線・受発光素子の実装のパッシブアライメント化・低コスト化技術として注目されている。
これまで自己形成光導波路の作製に用いられる光硬化性樹脂の硬化可能な波長範囲は,紫外光~波長850nmの近赤外光に限られていた。そこで,研究では光通信波長帯に感度を有する樹脂を開発した。
これにより光通信波長1310nm~1550nmの赤外光での光重合を実現した。開発した赤外光硬化性樹脂を用いて自己形成光導波路の作製を行なったところ,波長1310nmおよび1550 nmの連続波レーザーの出力が10μWという極低パワーで,SM光ファイバのコアと軸ずれの全くない,自己形成光導波路の作製に成功した。
次に,開発した赤外光での自己形成光導波路の作製技術を用いて,シリコンフォトニクスデバイス間の自己形成光接続を行なった。光ファイバ-赤外面発光レーザー(VCSEL)間と,光ファイバ-シリコン光回路間の自己形成光接続では,双方向から波長1550nmのレーザー光を照射するだけで,自動的にシリコンフォトニクスデバイス間を
接続することに成功した。
赤外光で硬化可能な光硬化性樹脂の実現は世界で初めて。研究グループは,それを用いた自己形成光導波路と自動接続技術は,光通信デバイスの簡易実装技術への応用が期待されるものとしている。