東芝は,新たな成膜法を開発することにより,世界最高のエネルギー変換効率15.1%を実現した,フィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発した(ニュースリリース)。
現在主流の結晶シリコン太陽電池は,重量および形態の面から設置場所が限られていることから,多様な場所に設置可能でかつ結晶シリコン並みの変換効率を持つ太陽電池として,フィルム型ペロブスカイト太陽電池が注目されている。
同社は,独自のメニスカス塗布印刷技術により,これまで,世界最大サイズとなる703cm2でエネルギー変換効率14.1%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを開発しているが,更なる変換効率の向上や低コスト化が求められていた。
同社が従来採用してきたペロブスカイト層の成膜法は,2ステッププロセスと呼ばれれ,基板上に塗布したPbI2膜の上から,MAIインクを塗布することでMAPbI3膜を成膜する。この手法では,PbI2とMAIの反応を制御することが難しく未反応物が残ること,工程数が多いこと,塗布速度が低速という問題があった。
予めMAIとPbI2を混合したMAPbI3インクを塗布して成膜する1ステッププロセスと呼ばれる手法があるが,MAPbI3結晶の成長を制御することが難しく,特に大面積に均一に塗布するのが困難なため,新たな塗布法の開発が必要だった。
そこで同社は,変換効率向上と低コスト化への貢献が見込める新たなペロブスカイト層の成膜法として,MAPbI3結晶の成長を制御することができる1ステッププロセスのメニスカス塗布法(1ステップメニスカス塗布法)を開発した。
新たに,MAPbI3インク,乾燥プロセス,装置の開発を行なうことで,大面積を均一に塗布することに成功。成膜プロセスの工程が従来の半分となり,塗布速度の高速化も可能になるとする。
塗布速度は,5cm角で量産時に必要と想定するスペックを満たす速度6m/分を達成。また,均一に塗布することで,フィルム型ペロブスカイト太陽電池としては,世界最大面積である703cm2のモジュールで世界最高エネルギー変換効率15.1%を達成したという。
同社は今後,実用化サイズとして想定される,受光部サイズ900cm2を目指すとともに,ペロブスカイト層の材料改良等で,エネルギー変換効率20%以上の実現を目指し,製造コスト15円/Wを実現したいとしている。