関学ら,MIで配位高分子を探索し光半導体を発見

関西学院大学と大阪大学は,マテリアルズインフォマティクス(MI)の手法を活用することで,配位高分子と呼ばれる有機-無機複合材料の効率的な合成条件探索法を開発することに成功した。さらに,合成した配位高分子が電子と正孔の両方を輸送する両極性を有し,光を照射することで電気を流す光電導特性を発現することを明らかにした(ニュースリリース)。

配位高分子は,金属イオンと有機配位子から構成される結晶性の物質で,無機物と有機物の性質を併せ持つ。

構造中にナノサイズの細孔を持つ配位高分子に電気を流す特性や太陽光を吸収する性質を付与することができれば,優れた特性を示す触媒や,光エネルギーを電気に変換する材料などへの応用が期待できる。しかしながら,優れた電気伝導特性を示す配位高分子の報告例は限定的で,新規物質の効率的な開発手法が求められてきた。

研究グループは,銀イオンと含硫黄有機配位子H3ttc(トリチオシアヌル酸)とを反応させて,結晶性の配位高分子を新規に3種類合成することに成功した。材料開発当初は,100通り以上の反応条件で合成実験を行なったが,不純物が混合した複雑な組成の粉末試料しか合成することができなかった。

そこで,機械学習の手法を活用した実験データの解析を試みた。まず,失敗した実験で得られた粉末試料のX線回折データをクラスタリング解析と呼ばれる教師なし学習の手法で自動分類し,得られた分類結果と合成実験条件の関係をランダムフォレスト及び決定木と呼ばれる教師あり学習の手法により解析した。

その結果,銀イオンとH3ttcの組み合わせで3種類の結晶多形が合成されることが明らかとなった。さらにそれらの新規化合物合成の成否に影響を与えるパラメータとして,反応温度と反応系中の水素イオン濃度が重要であることが明らかとなり,3種類の新規配位高分子を合成する最適な実験条件を効率的に探索することに成功した。

さらに,新規配位高分子を評価したところ,Ag2Httcの組成を持つKGF-6と命名した新物質が,優れた光電導特性を示すことが明らかになった。配位高分子のバンド構造を評価したところ,KGF-6の結晶構造中では,AgSからなる無機構造ネットワークが正の電荷(正孔)を流し,ttcの窒素と炭素からなる有機分子部位が負の電荷(電子)を流す,相分離構造を取っていることが明らかとなった。

このように,正孔と電子が流れる経路が分離した物質では,光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換材料として優れた特性を示すことが予想されるため,触媒や太陽電池などへの応用が期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 東工大ら,機械学習で光デバイスの材料探索支援 2024年04月01日
  • SSS,タイの事業所で光半導体製造を開始 2024年03月29日
  • 名大ら,準安定相型メソポーラス半導体の合成に成功 2023年11月07日
  • 統数研ら,準結晶を予測する機械学習技術を開発 2023年09月29日
  • ROISら,高分子合成をコンピュータで生成可能に 2023年08月31日
  • 北大,化学反応創成プラットフォームを開発 2023年07月06日
  • 東大ら,一部の情報から全電子構造を決定 2023年05月19日
  • 埼玉大ら,量子力学世界をスケール分離する手法考案 2023年04月28日