NICT,THz帯高精度/広帯域小型周波数カウンタ開発

情報通信研究機構(NICT)は,半導体超格子ハーモニックミキサを用いたテラヘルツ波用の周波数計測システムを開発し,電波の上限帯域を網羅する0.1THz~2.8THzという広帯域において精度16桁の計測を実現した(ニュースリリース)。

テラヘルツ帯を有効利用するには,スマートフォンなどで利用されているマイクロ波・ミリ波帯の電波資源と同様,様々な産業や研究に向けて周波数バンドを正確に区分し,適正な運用を可能にする計量標準技術の確立が重要となる。

これまで,テラヘルツ周波数計測システムの多くは,高感度化のために大型の低温装置や複雑な機構を持つ超短パルスレーザーを必要としていた。そのため,小型化が難しく,装置のオペレーターには光学機器の取扱いが求められた。

また,計測は可能だが動作帯域が狭い,若しくは動作帯域は広いが計測限界が未確認など,装置の動作帯域と計測精度に関する包括的評価も十分でなく,実用化を視野に入れた際に解決すべき課題が残されていた。

研究グループは,今回,超格子構造を持つ半導体ハーモニックミキサをキーデバイスとして採用することで,入力したマイクロ波帯の局部発振器信号を基にテラヘルツ基準を等間隔に多数生成し,それらを広範囲に分布した「精密な目盛り」にしてテラヘルツ波の周波数測定を実現した。

従来システムで装置の小型化と運用コスト削減の障壁になっていた超短パルスレーザーが不要となっただけでなく,原子時計からのマイクロ波標準信号を直接入力して使えるため,堅牢でより信頼性の高いテラヘルツ周波数の較正も可能になったという。

今回,テラヘルツ周波数カウンタの測定性能は,従来は不可避であった被測定テラヘルツ発振器の雑音に影響されないように設計・構築した評価系を使って確認した。その結果,このカウンタ1台だけで電波法で定義された電波の上限帯域を幅広く網羅しつつ,計測精度が16桁に到達することを実証した。

これは,1THzの電波周波数を100μHz以下の精度で決定できることに相当する。これらの性能は,小型かつ室温動作するテラヘルツ周波数カウンタの動作帯域幅と計測精度として,共に世界トップの性能だとする。

NICTは今回開発した超高精度・広帯域の小型テラヘルツ周波数カウンタを活用して,Beyond 5G/6G時代の様々な産業や研究を支える技術基盤の確立を目指す。特に,電波産業などの様々なニーズに応えるべく周波数標準器の較正サービスの拡大に取り組んでいくと同時に,テラヘルツ標準技術のグローバルな普及を目指すとしている。

その他関連ニュース

  • NTT,グラフェンプラズモン波束を発生/制御/計測 2024年07月26日
  • 【OPK】豊富なインターフェース,各種レーザー測定器をデモ 2024年07月17日
  • 京大ら,テラヘルツ電磁波の波形計測と制御に成功 2024年07月03日
  • 東工大ら,サブテラヘルツ帯CMOS ICで640Gb/s伝送 2024年06月19日
  • SB,独自アンテナで走行車にテラヘルツ通信 2024年06月05日
  • 京大,テラヘルツ照射で臨界電流の制御を実証 2024年05月28日
  • 京大,サブテラヘルツ帯電波伝搬シミュレータを開発 2024年05月15日
  • ドコモら,サブテラヘルツ帯デバイスで100Gb/s伝送 2024年04月11日