帯畜,レーザー穿孔した冷凍馬受精卵の移植に成功

帯広畜産大学の研究グループは,世界で初めてレーザー穿孔装置を用いた馬受精卵の凍結保存法の技術を利用した馬受精卵の移植に成功し,正常に馬の妊娠を成功させ得ることを示した(ニュースリリース)。

受精卵の凍結保存は絶滅が危惧される馬の効率的な生産を可能にすると考えられている。馬の受精卵の凍結保存を成功させる要因は,受精卵のサイズ,卵割腔の体積,および受精卵の損傷に関係するという。

運動性の低い精子を体外受精に用いる方法として,透明帯をレーザー​で穿孔する方法や顕微授精法などが知られているが,これまで世界でレーザー穿孔装置を利用した馬受精卵を凍結保存した後に移植され誕生した子馬の報告はなかった。また馬において大型受精卵(直径>300µm)の凍結保存が難しいことが報告されている。

この研究は,従来のピエゾドリルと新しいレーザー穿孔技術を利用した馬の受精卵凍結保存法を評価する目的のために行なった。まず,ピエゾドリルとレーザー技術を利用して凍結保存した6個の受精卵を加温した後,代理母馬に移植を行なった。

初回の妊娠鑑定は受精卵移植から5日後に行なった。移植された6個の受精卵のうち,2つの受胎が確認され,その後妊娠が維持された。このうちの1頭は,レーザー穿孔装置を利用して馬受精卵の周囲に穴をあけたのちにガラス化凍結保存し,加温後に非外科的手法で受精卵移植を行なって受胎に至った。

この研究成果により,レーザー穿孔技術の利用は,凍結した大型馬受精卵の生存率を上げる可能性が示唆された。研究グループは,これらの技術を確立するため,さらにレーザー穿孔技術による馬受精卵の凍結に関する研究が必要だとしている。