九大ら,光で超高解像度な遺伝子解析に成功

九州大学と京都大学は,光単離化学(Photo-Isolation Chemistry=PIC)という技術を開発し,非常に小さな細胞集団や細胞の中の微小構造体で機能する遺伝子を光照射により検出することに成功した(ニュースリリース)。

ヒトやその他の多細胞生物は少なくとも100種類以上の細胞タイプから構成され,空間的な配置や場所によってさらに細分化された機能や特性を持つ。一方で,これらの細胞を臓器や組織から取り出すと本来の特性を失うため,組織を破壊することなく特定の細胞のみを解析する必要があるが,従来の手法では不可能とされてきた。

研究グループは,半導体製造工程の光による超微細加工技術をヒントに,光を照射したエリアからのみ,遺伝子の発現情報を取り出す(=単離する)技術を開発した。フォトエッチングでは,シリコン基板の表面に1μmより細い光を照射し,基板の性質を変化させて超微細な配線や素子を形成する。つまり光は超微細に照射でき,なおかつ化学的な変化を与えることができる。

これをヒントに,組織や細胞内の超微細な領域に光を照射し,化学的に性質が変化した遺伝子情報だけを単離するというアイデアを着想した。今回開発したPICは,①逆転写反応,②光照射,③遺伝子増幅反応という3つのステップからなる。

①凍結した臓器や組織の薄いスライス(切片)を作り,その上に,遺伝子配列を読み取るための短鎖DNA(プライマー)を滴下すると,逆転写反応によって遺伝子のRNAがDNAに変換される。PICではそのプライマーに光照射によって開裂する化合物(光開裂性ブロッカー)を結合させている。

②目的の細胞に光を照射する。このとき,照射された領域においてのみ,プライマーからブロッカーが外れる。

③全ての細胞を溶解し,逆転写されたDNAを抽出するが,この中にはブロッカーが付いたものと,光照射で外れたものが混在している。これをIVTとPCRという手法で遺伝子増幅反応を行なうと,ブロッカーが外れたものだけが増幅され,遺伝子配列を読み取ることができる。

研究グループはPICにより,脳のさまざまな領域ごとに働きが異なる遺伝子のみを検出することに成功した。さらにマウス胎児の非常に小さな細胞集団や,従来不可能であった細胞内の1000分の1ミリ以下の微小構造体からも遺伝子を網羅的に検出したという。

研究グループは今後,この技術によってがんやCOVID-19による炎症など,正常と異常な細胞が入り混じった臨床組織の病理診断への応用が加速すると期待している。

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