国立環境研究所,宇宙航空研究開発機構,海洋研究開発機構は,航空機を用いた二酸化炭素(CO2)と二酸化窒素(NO2)の同時観測データから,燃焼由来のCO2排出量を精度よく推定する手法を開発した(ニュースリリース)。
脱炭素社会に向けて,温室効果ガスであるCO2の削減とその監視が求められる中,⾃然起源と⼈為起源の排出源から発⽣源別に排出量を推定することが望まれている。
人工衛星からの観測では地球全体を対象にできるが,⼀⽅で観測データには測定誤差があるため,⼤気中に⻑期に蓄積されたCO2と燃焼により排出されたCO2を発生源別に分離するのは難しかった。
そこで,燃焼とともにCO2と同時に発⽣するNO2が,CO2の排出源同定とその排出量推定に有効である可能性に注目が集まっている。研究では,航空機を用いたCO2とNO2の同時観測を世界で初めて行ない,NO2観測によるCO2の排出量推定の高精度化を実証した。
具体的には,航空機にNO2及びCO2の量を測定するため,可視,短波赤外を対象とするイメージング分光計を搭載し,得られたスペクトルデータにより,観測地点におけるNO2とCO2のカラム量を導出し,面的な分布図を作成した。
この面的な分布図を用いて,都市圏の排出源の一つである火力発電所から排出されるプルームの形状を割り出し,風速データと合わせて排出量を推定した。その結果,NO2を用いることにより,CO2の排出量の推計精度は3倍程度向上しうることが示唆されたという。
今回,航空機観測で実証された排出量の評価方法は,今後の人工衛星からの観測についても応用される。この手法を使うことにより,従来の統計データでは識別が難しいCO2排出源の発見や,CO2排出量推計の高精度化が期待されるとしている。