理科大ら,長期安定な有機‐無機受光膜を合成

東京理科大学,物質材料研究機構,台湾大学,台湾 交通大学は,有機―無機複合二次元物質であるビス(ジチオラト)鉄(II)(FeBHT)の大きな良質フィルムを室温でボトムアップ合成する方法を開発し,さらに,そのフィルムを用いたセルフパワー光検出器は,高い安定性を長期に渡り維持することを明らかにした(ニュースリリース)。

有機―無機複合二次元物質は,目的にあった多彩な化学・物理構造を設計できることから,オプトエレクトロニクス分野で高い注目を集めている。しかし一般に,有機―無機複合二次元物質は有機分子を含むことから安定性が低く,光電池などへの応用は困難だった。

機能性二次元物質であるCONASHはタイル状に敷き詰められた有機リガンド分子と無機金属イオンからなる2次元ネットワーク。電気触媒やフォトニクスによる自己組織化を利用したボトムアッププロセスで合成できることから,有機アニオンと無機カチオンの組み合わせの多様性が非常に高く,物理化学的な特性を調整することができる。

今回,研究グループは有機―無機複合二次元物質の耐候性の低さを克服すべく,大気中で安定なCONASHであるFeBHTをデザインして合成法を開発し,これを用いたセルフパワー光検出器の光応答特性を調べた。

まず,鉄イオンFe2+と臭化ナトリウム(NaBr)を含む水溶液(上層)と,ベンゼンヘキサチオール(BHT)の溶解したジクロロメタン(CH2Cl2)(下層)を室温下・窒素中で静置すると,2層の界面にFeBHTが生成した。こうして合成されたFeBHTは,水およびジクロロメタン不溶性だった。

次に,合成したFeBHTを酸化インジウムスズ(ITO)/酸化スズ(SnO2)基板上に吸着させてエタノールで洗浄した。光検出器であるFeBHTに対し,ITOとSnO2はそれぞれ,陽極と電子伝達体として機能する。さらにその上に,正孔輸送層Spiro-OMeTADと,陰極として機能する金(Au)をドープすることで,セルフパワー光検出器を作製した。

このセルフパワー光検出器の光応答特性および安定性を調べた結果,短い応答時間(<40ms),6.57mAW-1の高いスペクトル応答性,3.13×1011Jonesの高い比検出率,365nmで2.23%の外部量子効率の光応答を示すことを確かめた。さらに,大気下で非常に高い長期安定性をもつことも示されたという。

研究グループはこの成果について,電源のいらない受光センサーや,光を電流に変換するエネルギー供給素子として期待できるとしている。

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