神大ら,含水溶液中での疎水性物質の集合状態を観察

神奈川大学,大阪大学,東京理科大学,高エネルギー加速器研究機構,日本原子力研究開発機構は,水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中に独自開発の疎水性発光分子が分散した系について様々な測定を行ない,溶媒中の水の割合を変化させると発光分子を含む集合体のサイズと集合状態が変化し,それが発光強度の変化と相関することを示した(ニュースリリース)。

常温で液体の有機化合物であるTHFと水の混合溶媒中で,疎水性有機分子が集合体を形成することが広く知られている。このような溶液の水とTHFの比率を変化させると,溶液の性質が変化することがしばしば観測されている。しかしながら,集合状態がどのように変化し,性質の変化に影響を与えるのかについての詳細は明確ではなかった。

そこで研究グループは,以前に開発したCz-COPV2-BTz-COPV2-Cz(BTz)という発光分子を用いて,蛍光スペクトル測定と蛍光顕微鏡観察に加えて,動的光散乱(DLS),中性子小角散乱(SANS),広角X線散乱(WAXS)による測定を行ない,水含有量と有機分子の凝集状態の詳細,さらには発光特性変化との相関について研究を行なった。

BTz分子は,水には全く溶けないがTHFには良く溶け,水―THF混合溶媒中でも比較的安定な分散状態を保つ。また,発光性を持つ溶質を用いた際に見られる凝集起因消光であるACQを示すが,水―THFのあらゆる混合比において発光効率が十分に高いため,発光の観察が容易。

さらに,発光波長が分子周囲の環境(極性)に敏感であるため,環境変化を発光波長変化として観測しやすいという特長も有する。これらのことから,今回の研究に適した発光色素として選択した。

その結果,溶媒中の水の体積分率が約50%では分子が「緩い集合体」を形成し,水の割合が増加するにしたがって「密な集合体」へと変化することを明らかにした。また,このような集合状態変化と発光強度変化との対応も明らかにした。

今回得られた知見は,有機分子の集合体形成制御技術への応用が想定されるもの。研究グループは,有機ELや有機レーザーなどの表示・照明デバイスの効率向上や,薬物輸送システムの効率化による薬効の改善など,広汎な応用が期待できるとしている。

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