ViXionは,2021年7月より,ロービジョン患者向けの暗所視支援眼鏡「HOYA MW10 HiKARI」の新モデルを追加発売すると発表した(ニュースリリース)。
ロービジョン(Low Vision)とは視覚に障害を受け,「見えにくい」「見える範囲が狭くて歩きづらい」「まぶしい」などの症状により日常生活の行動に支障をきたしている状態。中でも網膜色素変性症は,昼夜問わず暗所になると物が見えにくくなる「夜盲」の症状があるなど,治癒困難な難病として知られている。
この製品は,HOYAが2018年4月に国内で販売を開始した夜盲症の人のための暗所視支援眼鏡。主に昼間は見えていても,暗所や夕方以降に見えにくくなる人を対象とする。2021年,意思決定のスピードアップと,よりきめ細かい利用者のニーズへの対応を目的としてプロジェクトチームがHOYAから分社独立し,ViXionを設立した。
その仕組みは,カメラでとらえた周囲の様子をヘッドマウントディスプレイに投射することで視覚をサポートするというもの。わずかな光でも明るく増幅するので,中心視野があれば視界を補助できるという。視野狭窄の患者にも広い視野が提供できるよう,広角カメラレンズ(水平最大142度)交換型となっている。
具体的には,眼鏡のレンズの間に設置した独自開発の高感度小型カメラで,暗所の光(推奨最低照度:0.5 lx,満月の夜の明るさ程度)を増幅し撮影する。眼鏡左右に内蔵した有機ELディスプレーからハーフミラーに投射するシースルー方式によって,使用者は暗所でも自然なカラーの明るい映像を,実際の風景と重畳して見ることができる。
主な仕様は,眼鏡部の重量135g,コントローラー350g。バッテリーで連続4時間駆動する。カメラとディスプレーの解像度は共にHD(1280×720)。今回発表した新製品は,この従来製品に,デザイナーの佐藤オオキ氏の監修により若年層にも親しみやすいデザインを採用したものとなっている。
若い世代や女性の共感も得られるよう,よりナチュラルに,顔にフィットするカーブ,カメラの凸部を目立たないシームレスなフォルムへと刷新。人間工学に基づいたバランス設計によるもので,快適な装用感を実現したとする。
さらに,現在,コロナ禍のため濃厚接触を伴うガイドヘルパーを十分に利用できないという声を反映し,撮影した映像の送信と音声通話を,事前登録したパートナーとリモートチャットできる機能を新たに追加搭載した(利用料500円/月)。例えば時刻表をカメラで写すことで,リモートのパートナーが代読するといった使い方ができるという。
この機能は従来製品にも搭載することが可能で,今後は新製品と並行して販売を継続する。本体価格は395,000円。2021年7月現在,この製品は全国52の自治体で,福祉機器である日常生活用具として認可されており,自治体により額は異なるものの,助成を受けて購入することができるとしている。