東北大ら,BCDIで合金触媒粒子内の歪を可視化

東北大学,米アルゴンヌ国立研究所,スロバキア シャファーリク大学は,合金触媒の表面近傍に予め内在させた歪が,合金触媒能を向上させることを明らかにした(ニュースリリース)。

燃料電池や空気電池の高効率化には,電気化学反応を促進するための触媒の高性能化が求められる。全体の反応速度を決める酸素還元反応では,触媒中の卑金属元素が溶出し,合金触媒粒子の表面を電解液に溶けにくいPtが覆った「Ptシェル」が残る。この「Ptシェル」は純Ptに比べ優れた活性を示すが,その理由は分かっていなかった。

研究で粒子の観察に用いたブラッグコヒーレント回折イメージング(BCDI)法は,X線の高い空間分解能を利用した,レンズを用いないX線顕微法の一種。この手法では,コヒーレントな放射光X線を用いて,測定対象とする粒子からのブラッグ回折とその周囲に広がるスペックルパターンを測定する。

次に,測定データを基に光学顕微鏡のレンズに相当する演算を,計算機を用いて代わりに行なうことで,測定した回折強度分布から,粒子の電子密度の三次元分布を計算機内で再構成する。

この手法では,X線の高い透過能に加え,試料の微小な回転(およそ1~2度程度)で試料の三次元像が得られることから,研究で対象とした触媒粒子などの結晶性試料のその場観察に適している。

BCDIではX線散乱強度の観察に,結晶格子の変位に敏感なブラッグ回折を用いるため,得られる電子密度分布は本来の単純な実数ではなく,位相として結晶格子の変位情報を含む複素数となる。複素電子密度の絶対値として与えられる電子密度分布からは,粒子の形状を評価することができる。

また位相情報は格子の変位を反映するため,そこから粒子内の弾性歪分布がわかる。したがってこれらの情報を用いることで,卑金属元素が溶出した後に合金粒子の表面に誘起された歪を評価できる可能性があるという。

研究では,様々な組成を有するPt-Ni合金ナノ粒子(粒径約200nm)を対象に,電気化学的にNiを溶出する処理を行なう前後やその過程で,粒子内部で歪が誘起されていく様子を,BCDIを用いて観察し,詳細に解析した結果,合金触媒における触媒活性は,触媒表面における歪が大きな影響を与えることが明らかとなった。

研究グループは,この研究で用いた解析手法や知見について,高効率な合金触媒の合理的な材料設計に貢献するものだとしている。

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