理研ら,藻類に紫外線照射で抗酸化成分の蓄積促進

理化学研究所,ユーグレナ,マレーシア工科大学(UTM),マレーシア日本国際工科院(MJIIT)が共同運営する微細藻類生産制御技術研究チームは,細藻類の一種であるコエラストルムとモノラフィジウムにブラックライトを照射すると,アスタキサンチンの蓄積が促進されることを確認した(ニュースリリース)。

アスタキサンチンはβ-カロテンやリコピンなどと同じカロテノイドの一種で,微細藻類が産生する成分の中でも活性酸素を除去する高い抗酸化作用があり,健康食品や医薬品,化粧品などで応用展開が進んでいる。

紫外線は,微細藻類に対して強いストレス因子であり,微細藻類は,このストレスによる細胞の損傷から保護するために二次カロテノイドの産生を誘発する。

このため,アスタキサンチンの蓄積を促進するストレス因子として長波長紫外線(UV-A)を発するブラックライトの刺激を検討するとともに,アスタキサンチンの抗酸化能をスクリーニングすることを目的として,研究を実施した。

単離した微細藻類をフラスコで培養し,UV照射を行なった場合と行なわなかった場合の培養15日後時点,30日後時点でのアスタキサンチン量を測定した。

コエラストルムでは,15日後の時点でブラックライト照射の有無でアスタキサンチンの量に大きな差はなかったが,30日後の時点ではブラックライト照射なしに対して,ブラックライト照射ありでは約5.4倍の顕著なアスタキサンチン量増加を確認した。

モノラフィジウムでは,15日後の段階では,「ブラックライト照射あり」「ブラックライト照射なし」ともにアスタキサンチンの蓄積は認められなかった。しかし,30日後の段階では,「ブラックライト照射あり」は「ブラックライト照射なし」に対し,アスタキサンチン蓄積量が23.74%有意に増加したことを確認した。

また,「ブラックライト照射あり」の条件で培養したコエラストルムおよびモノラフィジウムは、「ブラックライト照射なし」の条件で培養したものと比べて,抗酸化能を測定する方法の一つであるDPPHの消去活性で高い値を示した。特に「ブラックライト照射あり」で培養したコエラストルムでは,抽出したアスタキサンチンのDPPH消去活性率は高い数値を示したという。

この研究では,ブラックライト照射による,微細藻類に含まれるアスタキサンチンの蓄積促進と高含有化を確認するとともに,高い抗酸化能をもつ可能性が示唆された。これは,アスタキサンチンの量産化への応用が期待できるものだとしている。

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