沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,ペロブスカイトの原材料の1つであるホルムアミジン鉛ヨウ素を従来とは異なる方法で合成することが,ペロブスカイト太陽電池を改良する鍵となる可能性があることを実証した(ニュースリリース)。
ペロブスカイト太陽電池は安価であることに加えて,より軽量で柔軟性のあるものになる可能性がある。しかし,実用化に向けては,サイズや効率に加え,寿命も向上させる必要がある。
ペロブスカイトには,吸収層を形成するホルムアミジン鉛ヨウ素(FAPbI3)の結晶性粉末が必要となる。以前は,この層はヨウ化鉛(II)(PbI2)とヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)という2つの材料を混ぜ合わせて作られていた。両材料間で反応が起こることでホルムアミジン鉛ヨウ素が生成されるが,元の材料の一方または両方が残ってしまうことが多く,それが太陽電池の効率を下げていた。
解決策として,研究グループはより精密な粉体技術を用いて結晶性粉末を合成した。この際も原料の一つであるヨウ化鉛(II)を使用したが,90℃に加熱して丁寧に溶かし,残った材料を濾過するなどの工程を追加した。これにより,高品質で完璧な構造を持つ粉末を得ることができたという。
さらにこの方法により,各温度でのペロブスカイトの安定性が向上した。従来の化学反応によってペロブスカイトの吸収層を形成していた方法では,高温では安定性が見られたが,室温では元の茶色から光の吸収に適さない黄色に変色した。一方,合成によって形成したものは,室温でも茶色のままだった。
これまでに,シリコン系太陽電池に匹敵する25%以上の効率を持つペロブスカイト太陽電池が製作されてきたが,実験室以外で使用できるようにするには,サイズのスケールアップと長期的な安定性の向上,そして最大でも数千時間だった寿命の向上が必要となる。
今回,研究グループは,合成した結晶性ペロブスカイト粉末を太陽電池に使用して,23%以上の変換効率で2000時間以上の寿命を達成した。また,この電池を5x5cm2の太陽電池モジュールにスケールアップしても,14%以上の変換効率を得た。さらに,これを実証するため,ペロブスカイト型太陽電池モジュールを使用してリチウムイオン電池を充電する実験装置を製作した。
この成果は,効率的で安定したペロブスカイト太陽電池およびモジュールの実現に向けた重要な一歩となるもの。研究グループは今後,15×15cm2のサイズで,15%以上の効率を持つ太陽電池モジュールの製作を行なうとしている。