日本電信電話(NTT)は,IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を支える光アクセス網構成法として,多段ループ型光アクセス網構成法を確立した(ニュースリリース)。
今後の光ファイバ回線需要は,5G/Beyond 5G基地局等を中心に,高度な信頼性要求や発生需要の不確実性等の点でFTTHとは性質が異なるため,従来のスター配線では対応が困難になる場合が想定される。
そこでNTTでは,今後の光アクセス網のあるべき姿を検討し,次の三点を光アクセス網のめざす方向性として定めた。
①信頼性:超高信頼サービスを支える冗長経路の確保
②需要変動耐力:不確実な発生需要に対する効率的な設備利用
③光経路選択性:複雑な基地局構成等を直接つなぐ光経路選択
今回確立した光アクセス網構成法は,複数のループ配線を多段型につなげた構成となっている。ループ配線は信頼性や需要変動耐力に優れた配線方法として知られていたが,従来のループ配線法ではループ配線から離れた場所では十分な信頼性や需要変動耐力を得られないという問題があった。
この構成法は,複数のループ配線を多段型につなぎ合わせることで,エリアのあらゆる場所で高い信頼性と需要変動耐力を確保することができる。さらに,複数のループ配線を介して光経路選択の自由度も高め,上記三点の課題を同時にクリアする光アクセス網構成法を実現した。
また,ループ同士の接続点に光ファイバ心線の切替機能点を設けることで,必要となる心線切替稼働を削減し,運用の効率化もめざした。この網構成を既存の光アクセス網にオーバーレイすることで,従来のFTTHサービスに影響を与えることなく網構成を展開し,既存網と共存する。
この網構成を設計する上では,ループ配線の大きさや複数のループ配線で共用する光ファイバ心線数といった,従来にはなかった新たな設計指標が必要となる。そこでNTTでは,信頼性工学や確率論に基づく理論計算により,これらの設計指標の適正値を明確化した。
ループ配線の大きさについてはアベイラビリティが最も高まる条件を導出し,複数のループ配線で共用する光ファイバ心線数については発生需要を確率関数でモデル化してシミュレーションを行なうことで,需要変動耐力の確保に必要となる設計条件を導出した。
これらの理論計算に基づく網構成法は光アクセス網の設計に新たな知見を与えるものであり,NTTでは,IOWN構想を支える新たな光アクセス網構成法として確立したとしている。