九大ら,反射と散乱を自在に切り替える鏡を開発

九州大学と米ノースカロライナ州立大学は,光学・電気化学・分析化学の分野を跨ぐ融合研究として,液体金属の表面を,反射状態と散乱状態の間で動的に切り替える方法を開発した(ニュースリリース)。

研究グループは,液体金属の液体としての性質を利用して光学面を非研磨に作製する研究を行なってきた。液体金属の表面張力は大きいため,より口径の大きい光学曲面を作製することができる。

また,円筒状の容器内に液体金属を注射器等で一度容器の底から注入した後に吸引すると,円筒内壁と液体金属の濡れの関係から液体表面の形状が凸状の曲率から平面を経て凹状の曲率へ連続的に変化することを見出している。この方法で作製した液体金属の光学面を転写することで大きな(口径7mm以下)球面が作製できるという。

しかし,液体金属には空気中の酸素と容易に反応し,一旦酸化膜ができてしまうとこれが皺になり滑らかな光学面を損なって,しかも制御できないという問題があった。

研究では,ガリウムインジウム合金液体金属の表面を電解質で囲み,電圧制御と上記の注入・吸引を組みあわせることにより,凹面反射・凸面反射・平面反射と散乱状態を動的に切り替える方法を開発した。

まず,埋め込み型の小さな流路を用いてリザーバーを作製した。次に,電圧をかけながら,液体金属をリザーバーに注入・吸引することで,任意の曲率の球面を形成した。このプロセスでは,表面は常に還元されることで,曲率の異なる凸面,平面,凹面切替時にも光学面が安定して形成される。

さらに,電圧の向きを変えると,液体金属表面は強制的に酸化され,表面部の膨張が無数の小さな傷を作る結果,光を散乱させる面に切替わる。電圧を再び反転すると,液体金属の表面張力によって傷は消え,表面は再びきれいな反射鏡の状態に戻る。

さらに研究では,表面の電気的特性を電気化学測定によって測定して,散乱面と反射面の切り替わりの条件と比較した。その結果,酸化膜の形成と散乱面の形成の条件がわずかにずれていることも明らかにした。

今回得られた成果の一つに,ある条件下では表面をわずかに酸化させた状態でも滑らかな反射面を維持できることがある。その状態を制御することでさらに多様な光学面を作ることができ,生化学チップなどの高度なデバイスへの応用や,3Dプリント光学素子の製造への応用が期待できるとしている。

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