東芝は,「ソリッドステート式LiDAR」向けに,最長測定距離200mを保ったまま,世界最小のサイズと世界最高の解像度を実現する受光技術および実装技術を開発した(ニュースリリース)。
LiDARは自動運転システムにおける活用のみならず,高精度なインフラ監視を実現する技術としても期待が寄せられている。LiDARはレーザーを用いることから,一般的なカメラと比べて視界不良の状況に強く,長距離の監視が可能。その市場規模は急速に拡大しており,2030年には車載用のみで4,200万台/年の市場規模が予想されている。
同社は,2020年7月,従来の機械式LiDARと比べて小型化・低コスト化が期待できるソリッドステート式LiDARにおいて,課題とされていた長距離測定・高解像度の両立を可能にする2次元受光デバイスSiPMを開発した。しかし,実用化には画角・解像度・サイズにおいて,さらなる進化が必要となる。
そこで同社は,受光デバイスSiPMの感度の向上と小型化の両立を実現する受光技術を開発した。SiPMは,受光セルとその受光セルを制御する複数のトランジスタ回路から構成される。搭載するトランジスタ回路のうち,コア部分を微細化したトランジスタ回路に変更することで小型化した。
また,受光セルとコア回路の間に高耐圧トランジスタによる高耐圧部を設け,SiPMの感度向上に重要な受光セルへ高電圧(VEX)を供給することで,受光デバイスSiPMの感度の向上と小型化の両立に成功した。
さらに,新たに開発した絶縁トレンチをトランジスタと受光セルの境界面に挟むことで,これまでトランジスタの保護に必要だった幅の広いバッファ層が不要となり,さらなる小型化を実現した。このSiPMは,昨年開発時から,サイズを1/4に縮小しつつ,感度を1.5倍に高められるという。
同社は,このSiPMを採用し,さらに,LiDARモジュールの高密度実装を実現することで,従来に比べ,LiDARの解像度を4倍に高めるとともに,LiDAR全体の容積を世界最小の350cc以下に抑えることに成功した。
また,SiPMの温度にあわせて受光セルに供給する電圧を適切に調整する自動温度補正技術により,外部の温度変化よらず高い性能を維持することが可能だとする。同社では振動・風圧にさらされるLiDARを小型・軽量化することで,LiDARの設置条件を緩和し,アプリケーションの拡大に貢献するとしている。