広島大ら,非磁性的な希土類金属に磁性を発見

広島大学,独アウグスブルグ大学,英ラザフォード・アップルトン研究所,独マックスプランク研究所は,磁性をもたないはずの希土類金属CeIrSnにおいて,絶対零度に近い極低温領域で,磁気相関の発達を示す証拠を見出した(ニュースリリース)。

ネオジムなどの希土類元素を含む化合物では,4f電子が磁性を担う。しかし,希土類のセリウム(Ce)を含む化合物の場合,4f軌道に電子が出入りする価数揺動状態では,いくら温度を下げてもf電子による磁性が現れないことが知られていた。

研究ではまず,CeIrSnが価数揺動状態にあることを確かめるため,単結晶試料を用いて,硬X線光電子分光実験を行なった。その結果,Ceイオンが3価と4価の中間の価数をもつことが明らかになった。

また,中性子非弾性散乱実験では,4f電子が安定して存在するときに現れる磁気散乱が観測されなかった。これらの結果は,CeIrSnが価数揺動状態にあることを示す微視的な証拠だという。

続いて,絶対零度に極めて近い低温で,原子サイズを下回る分解能(~ 0.001nm)をもつ高精度の膨張率測定を行なった。一般的に,通常のCeの価数揺動金属に対して磁場を印加すると,価数揺動状態が壊れるために,体積が膨張することが知られている。

しかし,CeIrSnに対する膨張率測定の結果,0.5ケルビンでの磁歪が5テスラ以下で負の値をとり,それ以上の磁場で正に転じることが明らかになった。同様の振る舞いはCeの反強磁性体においても観測されるが,非磁性であるはずの価数揺動状態にもかかわらず,このような振る舞いを示すことは驚くべき結果だという。

さらに,ミュオンスピン緩和実験を行なった結果,試料に打ち込んだミュオンのスピンの緩和時間が,2ケルビン以下で急減した。このことは,極低温領域で磁気相関が発達したことを示す微視的な証拠だとする。

今回,巨視的/微視的プローブを包括的に組み合わせた日・独・英の国際共同研究により,CeIrSnの数揺動のエネルギーが数100ケルビンと巨大であるにもかかわらず,その磁気相関はそれより2桁も小さい2ケルビン以下で発達したことが観察された。これは,一見非磁性のように見える希土類金属の奥深くに,f電子による磁性が隠れていたことを示しており,希土類の価数揺動状態についてのこれまでの理解に一石を投じる重要な成果だとしている。

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