佐賀大学は,超高感度エミッション顕微鏡により,次世代のパワー半導体ベータ型酸化ガリウム半導体デバイスの動作に致命的な結晶欠陥を発見することに成功した(ニュースリリース)。
酸化ガリウムやダイヤモンドは,既存の材料よりもさらに大電力で高効率の半導体デバイスができることが理論的にわかっており,研究開発が進められている。
ベータ型酸化ガリウム半導体デバイスでは,2インチウエハー上に500個近くのデバイスが並べられるが,一部のデバイスはキラー欠陥により,逆方向リーク電流が高く,設計値より逆方向耐圧が低い特性を示すため,システムでの実用化は困難とされてきた。
研究グループは,パワー半導体デバイスの動作中に,リーク電流によって発生する微弱な発光を観察することのできる超高感度エミッション顕微鏡を開発した。これは,ウエハー上に作製されている半導体デバイスの電極に探針を下すことのできるプローブステーションに,光子1個を捉えることのできる超高感度のCCDカメラを取り付けたもの。
観察方法は,まず半導体デバイスの表面側のショットキー電極に探針を当て,裏側の電極との間に,ダイオードの逆方向に電圧を印加する。本来電流が流れていけない電圧の範囲内でも,キラー欠陥を介してリーク電流が流れ,そこで微弱な発光が起こる。それを超高感度CCDカメラで観察することにより,キラー欠陥を同定した。
これまでキラー欠陥は,電子顕微鏡で結晶欠陥を観察していたが,試料を破壊しなければならず,時間がかかり大面積で観察することができなかった。研究グループは今回,シンクロトロン光を使ったX線トポグラフィー技術を確立した。
これにより半導体デバイスのウエハーを観察したところ,キラー欠陥は,バタフライ(蝶)型のコントラストを示すことがわかったという。また原子間力顕微鏡などにより,多孔質の中心部に多結晶が囲む欠陥であることが明らかになった。
この欠陥は,エピタキシャル成長中に成長反応炉内壁からウエハー表面に付着した残渣が原因であり,成長反応炉に改良を加えることにより,欠陥の発生を抑え,半導体デバイスでもリーク電流のない,ほぼ理想の特性が得られるようになった。
研究グループは今後,これらのパワー半導体デバイスの評価技術を改良し,酸化ガリウム半導体デバイスばかりでなく,佐賀大学で開発を進めるダイヤモンド半導体デバイスの実用化も加速するとしている。