北海道大学の研究グループは,機械的刺激によってポリスチレンなどの汎用ポリマー材料に発光機能を付与する新しい方法を開発した(ニュースリリース)。
発光機能などをもつ機能性ポリマーは,現代社会の豊かで便利な生活を支える重要な材料だが,それらの調製には多段階の合成ステップがしばしば必要となり,複雑な有機合成反応に頼らない,より簡便な合成法の開発が望まれている。
ポリマーをボールミル中で粉砕すると,メカノラジカルが発生することが古くから知られている。また,ラジカル種と反応することで初めて強い蛍光を示す「ターンオン型」蛍光ラジカル反応剤が知られている。
そこで研究では,ポリマーと蛍光ラジカル反応剤を同時にボールミルで攪拌することで,ポリマーに発生したメカノラジカルとラジカルプローブが反応させ,ポリマー主鎖に蛍光分子を導入する検討を行なった。
研究では,ポリマーと蛍光ラジカル反応剤をステンレス製ボールとともにステンレス製ボールミルジャーに入れ,30Hzで30分間振とうさせた。具体的には,ポリスチレンとターンオン型蛍光ラジカル反応剤をボールミル中で攪拌すると,青く発光するポリマーが得られることを見出した。
種々の光学測定,GPC測定やNMR測定などにより,蛍光分子がポリマー主鎖に導入されていることを確かめた。この方法はポリメチルメタクリレート,ポリエチレン,ポリフェニレンスルフィドやポリスルホンなどにも適用でき,対応する発光ポリマーを簡便に調製することに成功した。
この成果により,複雑な有機合成化学的手法を用いずに,簡便に発光ポリマーを調製することが可能となった。この技術を発展させることで,発光性に限らず様々な機能を汎用ポリマーに付与できる可能性があるという。また,機械的刺激に応答性を示すポリマー材料やセンサー材料の開発への応用も期待できるとしている。