矢野経済研究所は,FAカメラ/マシンビジョン(MV)の世界市場を調査し,参入企業の動向,企業シェア,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2020年度のFAカメラ/MV世界市場規模は,事業者売上高ベースで3,293億円(前年度比97.2%),そのうち日本市場が995億円(同96.5%)となった。
市場の減速の背景には,新型コロナウイルスの影響によって設備投資の時期が先延ばしとなったことや,ベンダ各社が顧客先に直接訪問できなくなったことで商談が一時延期や中止となったこと等が挙げられるという。但し,ベンダごとに製品受注・出荷のタイミングが異なることから,市場が一度に極端に落ち込むことはなかった。
需要分野別の動向を見ると,FAカメラ市場では,コロナ禍においても半導体や電子・電機部品分野が順調に拡大した。だが,近年はキャッシュレス化やペーパーレス化が進展していることを背景に,紙幣や紙の印刷物に対する検査需要は減少傾向だとする。
MV市場においても半導体や電子・電機部品分野での需要が拡大したほか,FPD・液晶や三品(食品・化粧品・医薬品)分野での利用が増えたという。加えて,新型コロナウイルス感染拡大に際してマスク需要が急拡大したことや通販の利用が急増したことを背景に,不織布や段ボールを対象としたMVの利用が増加したとする。
注目トピックとして,中国のFAカメラ/マシンビジョン市場を取り上げた。FAカメラ/MV世界市場において,近年中国市場が大きく成長している。中国では,人件費の高騰などを背景に,工場の生産効率化に向けたFAカメラやMVの導入・利活用による自動化のニーズが拡大しているという。
コロナ禍においても,中国市場の回復は早く2020年度の下半期以降より受注が増加しており,前年度を上回るペースで推移している。特に,2020年度のラインセンサカメラ市場では,中国市場での伸びが他地域での減少分を補う形となって世界市場を牽引し,世界市場全体では微増で推移したとする。
市場の将来展望は,2021年度のFAカメラ/MV世界市場は3,420億円を見込み,2021年度から2026年度までのCAGRが4.1%で成長し,2026年度には4,189億円に拡大すると予測。今後,コロナ禍で商談や設備投資が先延ばしとなった案件が再び動き出し,2021年度以降の市場は再び拡大傾向となる見通しとする。中国市場が大きく成長していることに加え,欧米市場や日本市場でも2020年末頃から徐々に需要が回復しつつあるという。
欧米市場や日本市場では,今後品質向上に向けたAI搭載製品の活用や,製造工程のさらなる自動化に向けたFAカメラ/マシンビジョンシステムの利用の進展も期待されるという。だが,FAカメラやMVは設備投資計画の中に含まれ,投資の緊急性や優先度はあまり高くない。
そのため,中国市場以外はコロナ禍以前の2019年度と同程度の規模まで回復するには2~3年はかかると見通る。その中でも,日本市場は他地域と比較すると特に回復のペースがゆるやかになると予測する。