浜松ホトニクスは,科学計測用カメラ「ORCA-Quest qCMOSカメラ C15550-20UP」を2021年5月20日から発売開始すると発表した(ニュースリリース)。本体価格は517万円(税込)。
同社は,1980年代より低ノイズの科学計測用カメラを開発,製造,販売。現在では,ライフサイエンスをはじめとする学術分野やファクトリーオートメーション分野など,極めて微弱な蛍光,発光現象を撮像する技術が求められる用途に向け製品を提供している。また,市場からのさらなる低ノイズ化への要求に応えるため,究極の低ノイズ性能で,2次元光子数識別計測ができる科学計測用カメラの開発に取り組んできた。
この製品は,究極の低ノイズ性能の2次元CMOSイメージセンサーを搭載。また,2次元CMOSイメージセンサーの画素を一つずつ区切るトレンチ構造を採用し画素間のクロストークを低減することで,背面照射による高い量子効率と高分解能を同時に実現している。さらに,940万画素と高画素数ながら,信号の読み出し速度を従来の約27メガピクセル毎秒から約47メガピクセル毎秒と約1.7倍に高めたとする。
また,カメラの低ノイズ回路の設計技術や高精度のセンサー冷却技術,独自の信号処理技術により,各画素が持つ電気的な特性のばらつきを抑えることで,2次元CMOSイメージセンサーの性能を最大限まで引き出しているとし,この結果,従来製品と比べ約3分の1となる0.27エレクトロンと究極の低ノイズ性能で,世界で初となる2次元光子数識別計測を実現しているという。
この製品により,イオンや中性原子などからの光の量を定量的に画像化することで,量子の状態を正確に観察することが可能となり,量子コンピュータをはじめとする量子技術の研究開発が加速することが期待される。また,極微弱な光の現象を広い視野で撮像できることから,天文やライフサイエンス分野での応用も見込まれるとしている。